原作と映画の狭間


「映画が原作を超えたことは未だかつてない」というのが私の持論であることは何度も言いました。原作を先に読むか、映画を先に見るかと問われれば、迷うことなく原作を先に読むことを選びます。原作から得られるイマジネーションを映画の映像で固定化してしまうのはいかにももったいないことだと考えるからです。


この何年かの話題作でも「指輪物語」や「ナルニヤ国物語」は西欧では大ベストセラーの映画化ではあるのですが、これらの原作を読むパッションは全くなく、先に映画に触れてしまいました。とはいえ、どう考えても映画は名作とは思えないシロモンのように思いました。


今話題になっている「ゲド戦記」も同じように原作を読む意欲は全くなく、映画化のための様々ないきさつを聞くにつけ、映画を見る気持ちも萎えてしまっていました。


そんな中一昨日読んだこの方の日記に「ル=グインのとても控えめな抗議」という文章があって、「ゲド戦記」の原作者のジブリ映画へのコメントの存在を知りました。似たようなお話をジブリのプロデューサー鈴木敏夫氏のインタビューでも聞いてはいたのですが、ニュアンスはまるで違うものです。そりゃ、これから映画をヒットさせようとする人と、映画化の経緯に不満を持つ原作者では違うのが当然です。


原作者ル=グインのような気持ちは映画化される物語の原作者が皆持つものなのでしょう。自分の作品が別のものに変わり果ててしまう姿を見るのは辛いものです。


このお話を聞いて、読む気のなかった「ゲド戦記」に急に興味がわいてきました。果たしてどれほどの作品なのでしょう。読むのが楽しみです。