原爆記録映像


三村明という映画カメラマンをご存知でしょうか。


つい先日TVで見た広島長崎原爆被害を記録したカラー映像を見る機会がありました。米軍が原爆の破壊力を記録するために自軍のスタッフだけでは足りずに、協力を要請したのが広島出身の映画カメラマン三村明さんでした。


その映像は、一目でただ者ではないとわかる迫力と緻密な構図力、見事な陰影に彩られていて、記録のためというよりはひとつの作品としてひとカットひとカットが成立していました。廃墟と化した広島の悲惨さが伝わり、悲惨の中にも必ず立ち直ろうとする人の営みまで意識的に画面に組み込まれているのです。廃墟だけでなく未来へのかすかな期待までも映しこまれています。さらに焼け爛れた皮膚を記録した人々の映像までもが記録以上の内面性を感じる映像になっていました。


調べてみると、三村明さんはアメリカでカメラマンとしての修行を経て、日本人として初めてハリウッドのカメラマンユニオンに加入が許されたほどの逸材であったのです。


生まれ故郷広島の呆然とするほどすさまじい惨状を、被害をもたらした米軍のもとで写さなければならなかった三村さんが、記録という名のもとでもアートを感じさせる仕事をしていたという事実というのは驚きでありました。