ギル・シャハム〜イェラン・セルシェル

clementia2006-07-13



シューベルトの作品で手元にあるのはヘルマン・プライ美しき水車小屋の娘」とフィッシャー・ディースカウ「冬の旅」、未完成交響曲くらいのもので、他には見当たらないというお寒いクラシックなんちゃってファンです。


プロのバイオリン弾きに薦めていただいたギル・シャハムとイェラン・セルシェル「シューベルト・フォー・トゥー」はシューベルトの小品を集めた作品集です。聴いてみると「あっ、これ知ってる」「これも聴いたことある」の連続で、シューベルトの作品の中にはこんなにたくさんのよく知られた名曲があるのだと改めて認識した上に、未聴の曲でも二三回聴くとすぐに耳になじんでしまうほどの名曲揃いなのです。


大切なことは、これらの小さな作品たちがTVやラジオの断片で聞こえてくるある意味無機質的な音から、シャハムとセルシェルの手にかかると豊かな響きで生き生きと輝きだすことです。シャハムのバイオリンはメロウな音質でうねるように響くのですが、感情に衝かれて下卑ることがありません。逆にセルシェルのギターは堅牢な教会建築をみるようにしっかりとした骨格を持っていて、単純な感情表現を排しているのに秘めた情熱がテクニックの積み重ねで現れてくるようなアーティストです。


ちょっと目端の利くプロデューサーがこのアルバムを聴けば、一曲の断片を引っ張ってきて、歌詞をつけ、今風に編曲して、「第二のジュピーター」くらい簡単にヒットさせてしまうに違いありません。


ただ、美しい名曲は小品といえども「アーティスト」によって本来の感動を呼び覚ますものなのだな・・・と思わせるアルバムです。