行列のラーメン屋さん


生まれて初めて行列をしてラーメンを食べてきました。


この地の人々は「行列までして・・・」と行列のできる店が長続きすることはないのですが、新しくできた集合形の○○横丁と名のつけられたラーメン屋さんの集まる場所では、日曜日には行列ができるのだそうです。私自身はほとぼりの冷めたころ、お得意様の「○○はいけるよ」というお奨めを聞いてから出かければいいや、と思っていたのですが、子供たちの主張には逆らえません。


11:00に到着するとすでに各店には行列ができていて、それぞれの店に「世界各国の塩をコレクションし研究することから」とか「思い通りのスープができなければ店を開かない頑固さが」とか「羅臼と日高の二種類の昆布を」とか「秘伝の燻製玉子は」とか「遠州の厳しいからっ風にちなんで激しく焚いたゲンコツスープを」などという「こだわり」の看板が、店のメニューよりも大きくお披露目されていて、行列する客たちの心をわけのわからないままくすぐります。


選んだ店の行列に並ぶこと15分ほど、家族がばらばらにされて(5人でしたので)テーブルに案内され、食券で注文したラーメンを「早く食べろ早く食べろ」と煽るBGMと、並んでいる客たちの視線を気にしつつ5分で食べ終えました。




東京の有名ラーメン屋さんでは1時間の行列くらいは当たり前なのだそうですが、そうやって食べたラーメンを
「Fは水にもこだわっていて、逆浸透性浄水装置濾過水を使っているからスープがにごらない」
「評判のMは中細ストレート麺を使っているが、あのスープには蒸しと熟成多可水平打ち縮れ麺のほうが合うと思う」
「いや、僕は家系御用達○○製麺の太目ストレートにすべきだと思う」
「背脂チャチャッ系のGの背脂はもう少し脂の粒が細かいほうがいい」
「WスープのXは海鮮系の干し貝柱味わいをもう少しおさるとランクアップする」
東海林さだおさん”ゴハンの丸かじり”参照>>めちゃくちゃ面白いラーメン批評でした)


・・・・なぁぁんて、5−10分であわただしく食べた後、net上で真顔で語り合っているらしいというのは本当なのでしょうか。




今日食べたラーメンがそういう話題のまな板の上に載るべきものかどうかも知らないのですが、看板に書かれていたすべての「こだわり」にツッコミを入れることができるとはいえ、食べたラーメンは、まっ、普通に美味しくて「別にこだわりなんてお披露目しなくたっていいじゃん」と思うような、とりあえずはそんなに不味くはないラーメンでありました。


値段との折り合いがついているかどうか(こだわりの食通の間ではCPとか言うのだそうですが)は別として、700円にしか思えないラーメンが820円でも怒りはしない私ですので、その辺も含めて、街場のラーメンのこだわりにいちいち反応して、グルメごっこをするつもりもないのです。


それよりも普通に美味しい街場のラーメンを、ふらっと入って、ラーメンなりに落ち着いて食べ終え、ちょっとのんびり店主と無駄口をたたくような気楽な雰囲気はもう味わえないのでしょうか?行列というストレスと、早く食べるという圧迫感と、流れ作業のように客をさばくそっけなさこそを何とかしてほしいと思うのです。私たちが食べたいのは餌ではなくて、美味しいものを食べて満足している時間なのです。「こだわり」に満足するために食べているのはなくて、本来ラーメンも食べて和むもの、食べて満ち足りるものであるはずです。


行列、たぶんもうラーメンのためにはしないと思います。