菊姫荒走り

clementia2006-03-23



石川県鶴来の「菊姫」は私にとって初恋の人のような大吟醸です。


今から20年以上前、世の中でぼつぼつ大吟醸が販売され始めた頃、料理屋でもそんなお酒を置いてみたいと思って様々な吟醸酒を試してみました。数々のお酒の中で菊姫大吟醸は圧倒的な迫力を持っていました。「もうこのお酒だけあればいい」「一生これ一本で勝負する料理屋でもいい」と思い込むほど当時の菊姫は存在感がありました。


その後お酒の世界は激変の時代を迎え、いろいろなキャラクターを持つ優れたお酒が出始めて一種類のお酒ではもったいなさすぎるほどの百花繚乱ぶりです。思い入れのあった農口尚彦杜氏菊姫を引退された頃から、あれほど入れ込んでいた菊姫もたまに使うお酒になっていたのです。



先日信頼する酒屋さんのご主人から電話がありました。これまで一度の営業の電話なんぞかけてくる人ではなかったのですが、興奮した口調で「この菊姫はいいですよぉ、すごいです」と語りかけてくるのです。「珍しいですねぇ。一度も売り込みの連絡なんてしなかった人が絶賛の電話をくれるなんて」と、電話一本ですぐに何本かを送っていただいたのが「菊姫 BY大吟醸 三号タンク 荒走りおりがらみ」


普段のBY大吟醸よりもさらにパンチの効いたアタックと口に広がる米の旨み、余韻がすばらしく長くて「THE酒」と呼びたい荒走りです。今まで菊姫さんがバレルセレクションのようにタンク別でお酒を出した事は記憶にありません。ましてや大吟醸荒走りも初めてのことだと思います。出来上がったのは一升瓶で100本だけの限定です。


試飲で飲んだ数mlで即追加注文を決めました。久しぶりにあった初恋の人が色あせていないことが嬉しくてなりません。