ミュンヘン追記


内田樹さんの日記になるほどねと思う映画「ミュンヘン」の記述が



「秘書は1972年のミュンヘンオリンピックのときにはまだ生まれていないので、「ブラック・セプテンバー」のことを知らなかった。
それは困った。
PFLPやバーダー=マインホフやジョルジュ・ハバシュやゴルダ・メイヤという名詞が何を意味しているのか知らないと、映画の登場人物たちが何の話をしているのか、よく(というかぜんぜん)わからない。
秘書は同世代の中では物知りのほうである。物知りでもこれくらいということは、二十代の一般観客はこの映画の中で口にされる固有名詞の90%くらいが理解不能ではないかと思う。
日本の若い観客(特に映画観客の大半を占める20代―30代女性)の政治史関連知識が非常に(悲劇的なまでに)浅いという現状を鑑みるに、この映画が日本で十分な興行的成功を収めることができるかどうか、スピルバーグの天才的な映像と作劇術をもってしても予測は困難なのである。



そういえば、連れ合いも「よくわかんなかった」と言っておりました。(因みに同じ年なのですが)少なくとも私は予習なしでもそこそこには理解できたつもりでいたのですが、歴史認識の世代格差、無関心というのは案外深刻なのであるな・・・と、やっと知ったのでありました。



だとすれば、TVなどで見た映画人気ランキングbest5に「ミュンヘン」の姿が見えないのも当然と言えば当然。



さらに愚痴を言えば、そんな映画を支える民度であるがゆえに、ランキングトップが「県庁の星」であるのも当然。昨日だったかの日本アカデミー賞で十何部門も独占したのが(独占するほど素晴らしいってことね)「ALWAYS 三丁目の夕日」であるのもの当然。最優秀作品賞ノミネートに「北の零年」や「亡国のイージス」が入るのも当然(最優秀なんだぁ)。最優秀脚本賞ノミネートに「亡国のイージス」が入るのも当然。最優秀脚本と言いつつオリジナル脚本ではなくて脚色ばかりが並んでも不思議と思わないのも当然。


毎年見ないでおこうと思う日本アカデミー賞ではあるのですが、ふとした拍子に受賞作品を知ってしまうと、日本映画への落胆と情けなさだけが残るのであります。きっと来年の各賞独占は「有頂天ホテル」なんだろうなぁ。