CPなんてどうだっていい

clementia2006-02-15



"CP" コスト・パフォーマンスのことをCPというのだそうです。近頃では料理屋を判断するときに盛んに使われます。CPが納得できるかどうか。素人グルメ評論では特に俎上に乗り易い話題です。


もちろん、料理にもお酒にもコスト・パフォーマンスがついて回るのでしょうが、時として「この素材に、このお酒の原価がどれくらいでどれほど儲けているかなどどうでもいいではないか」と思わせるような名品に出会うことがあります。原価計算など些細な事、というほどの迫力のある品物です。


今年味わった「十四代 龍泉」は正にそれです。


これまでに三回経験した「龍泉」ですが(今のようなパッケージングと造りになってから)、今年の16BY(平成16年醸造)は飛びきりでした。お酒を扱うプロとしては毎年の味わいを冷静に判断し、それを頭の引出しの中に整理して記憶させることはとても大事なことです。一般消費者のように「○○は味が落ちた」などという言葉も簡単には口に出せません。自分が大切に選んだ蔵のお酒ですから、年による少々のばらつきがたとえあったとしても、生き物であるお酒を扱っている以上それも長い目で見たら充分許容範囲のうちであると考えています。むしろ、お付き合いを深めていくととてつもなく素晴らしい造りに出会える喜びを内包していると考えるべきです。


「龍泉」はもちろんこの三年、高いレベルを維持してきたおさけなのですが、今年味わったボトルは切れ味と香り、バランスのよさに加え、味わいがこれまで以上に深い、奥行きが素晴らしくあるお酒に仕上がっています。このクラスのお酒はとかく綺麗に美しいお酒であることが命題にもなっているのですが、奥行きと余韻の長い日本酒というのは稀有です。


ここまでくると、「ボトルや箱にお金をかけるならばお酒そのものに手間をかけるべきだ」とか、「その分安くするべきだ」などというレベルのつまらないお話はどうでもいい事に思えます。このお酒の品格にはこのパッケージングでいいではないか。これほどのお酒はひたすら頭をたれて美味しさに酔いしれるだけでいいではないか・・・とその世界に埋没したくなります。それほど有無を言わせないお酒なのです。


いただけるのは一年に四合瓶一本だけ。味わえるお客様は数人。