不良じいちゃん


お隣の町の幼馴染、80歳になるおじいちゃま三人がときどきお見えになります。


「適当になんか見繕って。ビールと後で熱燗ね」


お昼でも三人で必ず一杯やり、ゆっくりと宴会気分で時間を過ごされます。お昼のパートさんのおばちゃん(40代)に「今日も綺麗だねぇ」と軽口をたたき、その代わりご祝儀も忘れることがありません。調理場にも「はい、みんなで食べて」とお菓子を持ってきてくださったりもします。


ランチでのご利用でも、昔の街場の旦那のお遊び感覚をちゃんと今でも持っていらっしゃるのですね。


「あーーー、昼間っから酔っ払っちゃたなぁ」と赤い顔をしてお帰りになるのをお見送りするとき、流行の「チョイ不良(ワル)オヤジ」なんていうメディアの流行を狙ったマーケッティングのブームではない、地に足のついた(?)ちょい不良(ワル)じいちゃんたちのほうがスマートに見えたりします。


考えてみると、「ちょい不良(ワル)オヤジ」をイタリア伊達男に求めるってのも変なお話で、昔の旦那衆には十分その原点があるのです。私個人はイタリアは食もデザインも大好きですが、購買意欲をそそらせるためのマーケッティングの「標語」の一つに躍らせる姿というのは、昔各地のテーマパークにヨーロッパの○○を持ってきていたのと根が同じようで浅薄な印象があります。ライフスタイルや所作仕草、素養と言うのは「ちょい不良(ワル)」でも「旦那」でもマニュアルや教則本で学ぶものではなくて、培うものであるはずなのに、雑誌でこう書いてあったファッションだとか、TVでこういっていたマナーだとか何一つ培ってはいない付け焼刃なものでしかありません。なぁぁんか私も含め勘違いしているんですよね。