正しいあり方


豊橋フラスカティさんへ伺ってきました。家族にとっては美味しい時間を楽しめるレストランであるのですが、私には「ウカウカしてらんないぞ」と刺激を頂戴するために出かける場所でもあります。


年末に伺うムネを伝えた時、「とっておきを用意しておきます」とおっしゃってくださったその内容は・・・・


フレッシュな野菜のバーニャカウダ:コクがあるにニンニク臭さが微塵もないソースはいつまでも嘗めいていたい美味しさ。「これがバーニャカウダってもんです!」と正しい姿を見せつけられたような逸品。これまで食べたバーニャカウダはすべて「なんちゃってバーニャカウダ」でした。


平目、ホワイトアスパラ、グリーンアスパラ、ルッコラ(原種)、みる貝、洋ナシのサラダ:市場が休みなのにこんな極上を平目を使われたのでは和食の立場がありません。ホワイトアスパラの火通し加減が絶妙。ルッコラの香りと洋ナシがアクセントになって各々が主張しているのに全体で溶合ったサラダ。「イタリアンは素材だけのよさ」と思っているお方はこういうサラダを食べてみると考え方が変わります。


ホワイトアスパラとたっぷりチーズのリゾット:「リゾットはアルデンテでなくてはならない」・・・とはよく聞くのですが、この一皿でこの言葉をはじめて理解しました。バーニャカウダと同じく、いままで食べたリゾットはただの「オジヤ」もしくは「お粥」でした。「正しい姿」を理解した上で料理をしているイタリアンの料理人というのは日本にどれほどいるのでしょう。増してや創作料理を標榜している店の「○○風」は本来の○○を超えているのでしょうか?私は多分「リゾット風」も「カルパッチョ風」も決して作りません。榊原シェフの一皿を超えられる自信が全くありませんから。


手打ちパスタ ウサギのラグーソース:う、美味い!


蝦夷鹿のロースト又は青首鴨のロースト:「又は」じゃなくて両方食べたのですが、、、、蝦夷鹿はTボーンステーキを絶妙の火加減で。シンプルに塩コショウは控え目なのに、添えてある塩とEXヴァージンオイルがパンチになって旨みを感じます。青首は逆にローズマリーの香りが強調されて肉の旨みを引き出しています。こういうのを食べてしまうと和食でジビエに挑戦するのは無謀な気がします。激美味なのにストレートパンチを食らって意気消沈してしまう感じ。


デザートは三種類のチョイス、美味しかったのですが、シェフとのおしゃべりに夢中で美味しかった事だけしか思い出せません。それに加えて奥様のクールビューティなサービス、この奥様ファンが私の店のお得意様にもたくさんいます。彼女が出産休暇に入る前に出かけることをお奨めします。


これまで食べた料理すべてに言えることなのですが、榊原シェフの料理は食材の持ち味をギリギリのところまで引き出す豪胆さと、食材通しの調和を考えた繊細さが一緒になっていて見事としか言いようがありません。今華やかにもてはやされる東京近辺のイタリアンが、小ざかしく小奇麗なのに比べるとラテンの心を食べ手にストレートに伝えてくれる稀有な料理人です。こういう方が選ばれた食材を得てグングン伸びている現場に立ち会えていることが幸せです。新年初のお出かけは充実していました。