古酒の許容範囲

clementia2005-12-23



「チーズの香りがしはじめたワインはもう俺にとっては価値のないワインだ。5年以内に飲め!」とおっしゃるブルゴーニュ、リッシュブルーをもつ蔵主がいるというほど、フランス人は若々しいワインが好みなのだそうです。


「いえいえ、10年待たずにリッシュブルーを開けるなんて犯罪です」・・・というのは(お粗末ながら)私、古酒が、いえ古酒も好きです。ワインも日本酒も熟成させてナンボ。とかく日本人は古酒、熟成に対して寛容であるといいます。


尊敬するソムリエさんは「こんな腐ったワインを私に出すなんて」とグラスのワインをぶっ掛けられた経験があるそうです。きっと枯れた(私などには)えもいわれぬ熟成したブルゴーニュワインであったに違いありません。彼が選んだワインに酸化やブショネがあるとは思えません。


「こんな美味しいワインは初めてです」とおっしゃってくださったワイン初心者という中年カップルのお客様におだししたのは、20年を経たポマール1985。渋くてすっぱいワインしか飲んだことのない方に冒険と思いながら改心のヒットを放った(というかまぐれ当たり)もあります。




日本酒の古酒はさらに難しいものです。


まだまだ、一般の方々には認知度の低いひね香のある熟成古酒は、お客様を選んでお出ししなければ痛い目を見ます。私ン処のお宝「達磨正宗昭和54年純米甘口果実香」ほどに日本酒とは別次元にまで到達した偉大なお酒であればまだ理解していただけるのですが、大吟醸古酒となると、まさにお客様の古酒の許容範囲がためされるお酒です。


先日いただいてきた「岩の井秘蔵十五年古酒」は発売されたのが平成三年。その後常温で14年寝かされていましたので、ほぼ三十年を経た大吟醸古酒です。これほどの大吟醸古酒にはめったに出会えません。あえて比べれば、同じ岩の井の昭和47年大吟醸古酒、綾菊13年古酒大吟醸(都合20年を経た古酒)くらいが思い浮かぶくらいでしょうか。ただし、この古酒を「エレガント」と思える方にだけお出ししたいお酒です。なにしろ世の中に四合瓶二本ですから。箱にかぶった埃もいっしょにいただいてきました。