ブランド


ピエール・ガニェールの東京店が開店しました。一部を横目で見ただけですが、早速日ッテレがお得意のドキュメントで追っかけていたようです。


フレンチ、イタリアンではスターシェフが続々と日本に出店していますし、日本人のカリスマ・シェフも支店展開が盛んです。今回のガニェールなどはTVでガニェールの支店というよりも、ガニェールブランドを日本に作るという意志を打ち出しているようで、仕掛けた社長までもが登場しています。


シェフの自己資本で支店を一店舗出すというような支店展開の時代は、ビジネスの世界ではすでに時代遅れです。シェフの名声をブランド化する企業がいて、シェフはロイヤリティと技術を売る。集まるスタッフまでもが、「○○の店で働いた」という勲章のために給料も安く抑えられるのだそうです。修行までがブランドなのですね。


今注目されるレストランビジネスの形態は東京ではブランドの時代に突入しています。ここでもブランド好きの日本人はまんまとマーケティングに躍らされ、「ブランドに囲まれたステキな私」にウットリするのです。


ガニェールという天才的な個の能力を味わうような料理をパリから遠くはなれた東京で味わうには、「ガニェールの料理」ではなくて「ガニェールが考案した献立」を味わう店であることを念頭に入れておかなければがっかりすることは間違いありません。私がこれまで尊敬し愛してきた料理の数々はシェフが料理場に立ち、目を行き届かせた優れた品々ばかりで、憧れのシェフがいない店には興味がわきません。


料理をビジネスにしようという時代の大きな流れにどんな棹をさしても無駄な事でしょうが、料理はやっぱり個を楽しむものだと固く信じたいものです。