研修生


12月に課外授業で調理師学校から研修生がやってきます。


まだ十代、初々しい学生です。女性にも分け隔てのないつもりでいる私ン処には、いつも女の子が回ってきます。娘と同世代、考えてみれば私は彼女たちのお父さんとも同じ世代なはずで、親にしてみれば男性中心社会の板前の世界に研修とはいえ娘をやる事にはハラハラするのではないでしょうか。


事実、研修前の面接で生徒たちと話をすると、「失敗をすると怒鳴られそうな恐い場所」という先入観があるようで、いざ仕事を体験してみると「思いのほか優しい」と例外なく思うようです。


だいたい調理場の緊張感と罵声は別次元のお話な訳で、TVなどで演出っぽく「新人の失敗」「調理長の罵声」「便所で涙」なんていうステレオタイプな調理場では人間関係がぎすぎすしていい仕事ができるはずがありません。若いものの失敗の多くは、理解できない仕事、能力の及ばない仕事を与える調理長の側にもあるという事実を年長者はしっかり認識すべきです。私自身昔先輩に「お前の教え方が悪いんだろぉ」と心の底で何回思ったことか。


さて、今年の研修生二人、とても素直でまじめに仕事に取り組んでくれています。初日から出し巻き卵や鰆の三枚おろしなど、「研修生がこんな仕事までやっていいのですか?」と驚きながら緊張の面持ちで取っ組んでいます。学校の試験では及第点をとった出し巻き卵も現場では失敗の連続。普通よりも出汁が多し、卵焼鍋も大きいし・・・で落ち込みます。一ヶ月の研修できれいに出し巻き卵が巻けるようになったらまず「大したもんだ」と褒めてやりましょう。