メディアと酒屋のためのボージョレー・ヌーボー


今日はボージョレー・ヌーボーの解禁日です。


あの店でもこの店でもこの日だけはヌーボーだヌーボーだと新酒の栓を開けます。私ン処のような店でも「ボージョレー・ヌーボーないの?」っていうお客様が出てくるくらいに日本中が大騒ぎ、なにしろジャンボ機100機分の新酒が日本に運ばれるという「浮かれトンチキ超お得意さま」なのであります。


メディアも二〜三日前からこの話題で盛り上げようとしています。まっ、酒屋さんに元気が出てお酒が売れるというのはいいことなのですが、メディアで「今年のワインの出来を占う」とか素人が「この数年で最高の出來です」とか言うのを聞くと全く居心地が悪い気がします。


大体ボージョレー地区のワインの出来で、フランスワイン全体の出來を云々できる訳がなく、私など数年前、たとえば1995年と1996年のワインのキャラクターの違いがやっと少しだけ理解できるようになった程度のワイン好きですから、新酒を飲んでそのヴィンテージの数年後を予想する事など100年経っても無理です。フランスの片田舎の農民が収穫を終え、「いやーー、今年もがんばったね。なかなかいい出來いい出來」と喜び合う収穫祭に、極東の島国で「この夏は雨が少なくて日照時間が・・・・」なんて語り合うなんぞボージョレー地区のワイン農家が聞いたらひっくり返るようなスノッブな世界なのではないかと想像するのです。


新酒の葡萄ジュースのようなお酒に浮かれて2000円以上の値段を払ったり、ワインの出来を語る気持があるのなら、ボージョレー・ヌーボーと同じガメイ種を多く使ったすぐ近くのブルゴーニュ・パストゥグランにだって注目してくれればいいのに。


私ン処にあったジャイエ・ジルのパストゥグラン1996は、「えっ!これがパストゥ・グラン!!」というほど濃厚でボリュームのある素晴らしいワインだったのに誰一人価値を理解してくれませんでした。今置いてある、神様アンリ・ジャイエの後継者エマニュエル・ルジェパストゥグラン1997もガメイだって熟成すると葡萄ジュースとは天と地の開き・・・と言うほどのワインなのにだれも注目してくれません。(熟成を経ても値段は葡萄ジュースと同じ) 同じくメオ・キャムゼのパストゥグラン1998も同じ憂き目に遭うのか?? メディアが騒がなければ正しくひっそり美味しいワインは誰も見向きもせず評価も出来ず、お祭りだからと作られたプロモーションに「まっ、一年に一回だからだ」躍りまくる可笑しな風潮に今年も愚痴をいってしまうのでした。


それほど新酒のお祭りが好きなら日本酒の新酒、槽口荒走りだって飲んで評価して欲しい。