恐ろしいお客様


一見のお客様でも予約の電話やmailを頂戴した時点で、「只者ではなさそうな・・・」という雰囲気が伝わる事があります。特別な注文ではないのですがなにかが違うのですね。


ご予約をいただいたのは松花堂弁当、新幹線を途中下車してお昼を召し上がってくださるというご注文でした。


ご来店いただいて、軽く一杯というお酒の注文からして「やっぱり、只者ではなかった」と、予想は確信に変わりました。だからといって献立が変わるわけでもサービスが変わるわけでもないのですが、ハラハラはつのります。


一味鯛やカマスの素性を一口で理解し、その日の朝ふと思いついて試してみた白インゲンにほんの一かけしたエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルが稀少なものである事まで見破られてしまいました。


「このオリーブオイルは特別なものなんですか?」


白インゲンを干貝柱の蒸し汁で焚いてバジルを香りに加えたものに、「相性が良いかもしれない」と一振りしたヴァージンオイルは日本に数百本だけ入った特別なものであったのです。


理解していただいたという嬉しさもさることながら、思わず冷や汗が出たのも確かです。「そこまでわかる方には落ち度もちゃんとわかってしまうはず・・・・」と。どんなお客様にも手抜きは出来ない事は当たり前のことながら、「それで大丈夫か、自分」と常に問い掛けていないと堕落は簡単にやってくるのだ、ということをヒリヒリと感じさせてくれるお客様でありました。