進化する昭和54年


「達磨正宗 昭和54年純米甘口果実香」は、現存する日本酒古酒の中でも傑出した偉大なお酒であることは間違いのない事実です。


店で食中にどれほど素晴らしいお酒とお料理をお出ししても、食後に「いい古酒があるんですよぉ」と昭和54年を召し上がっていただくと、感嘆の声とともにそれまで飲んで食べてきた料理とお酒の印象をすべてかっさらってしまいます。「今日の古酒は凄かった」お褒めの言葉だけでお帰りになり、「料理は?ほかの銘酒は?」と確認したくなるほどある意味困りモンのお酒なのです。


すでに造られてから四半世紀以上、これからも熟成はゆっくり進むものと思っていたのですが、あるワイン通でもあるお得意様が食後に何回目かの達磨正宗昭和54年を召し上がって驚きの声を上げました。


「あれぇぇ!親方、昭和54年、半年前よりさらによくなってるよぉ!」


高価なお酒ですので私もそう頻繁に試飲するわけではありません。早速ご相伴させていただきました。さすがに数々の銘ワインやヴィンテージポルト、ヴィンテージ・マデラをご存知の方です。確かに昭和54年純米甘口果実香はさらに進化していました。


ひね香は凝縮し雑味が洗礼されて美しく熟成し、甘味はよりまろやかに変化していました。ソフィスティケイトという言葉がピッタリくる進化です。これほどの古酒はすでに世界中を探してもそうたくさんは存在しないのではないかと思うほどのレベルに達しています。短い時間では感じられないようなゆっくりした熟成が進むものと思っていたこの古酒は、半年の間で舌にちゃんと感じる熟成をしてくれています。


このお酒を店で使わせていただいていること自体が誇りに思える瞬間です。