お題目その2

clementia2005-08-10



原産地表示の規制もあったりして、食材の産地を明示する事が普通になりつつあります。一方、産地を表示したり、生産者個人の名前を前面に打ち出すことが「素材へのこだわり」を高らかにうたうマーケッティングの手法の一つにもなってきています。


例えば大手のビールのCMでも「北海道○○さんのホップを使用してます」と大きな声で言うだけで消費者は「こだわり」を感じで美味しいものができるような気がします。一般市場でも野菜のケースに生産者の名前を書いたり写真を添えて、「農家さんが丹精こめた」を演出する事は頻繁になりました。「○○さんが作った」は確かに生産者に自信がなければ打ち出せないことではあるのですが、「○○さん」が本当に力のある農家さんであるかどうかは写真や名前だけではわからないはずで、食べてみて判断しなくてはいけません。


ずっと以前に京都「千花」さんで食べた茄子は、茄子の箱に書いてある生産者番号で作り手を特定して入手していらっしゃっていたと聞いたことがあります。売る側が「○○作」と打ち出すという発想ができる以前に自分で探し当てる努力をなさっているのです。私ン処でも生産者や産地を特定する事は10数年前から取り組んでいるのですが、○○さんだから美味しいとか、○○産は間違いないというよりも○○さん○○産の中には素晴らしいものもあるというスタンスを崩さないようにしています。お題目でうたっているから美味しいのではないのです。


産地、生産者を限定する事がマーケッティングの一部になってくると当然、「売り」となるお題目はすべて利用されます。「無農薬」である「有機栽培」である「限定生産」である・・・・。無農薬や有機栽培は味に即反映される事柄にはなりにくいですし。限定生産はデパ地下の「限定」と同じく在庫をのこさないための手法かもしれません。お題目が先に立つことには一歩下がって見据えなくてはいけません。本当に美味しいのかどうか?「こだわり」は消費者の心をくすぐる心理的売込み作戦の一つである場合も多いのが事実です。



で、
写真は南瓜。どちらがどう違うのか見た目では判断できない感じです。左はどこのマーケットでも同じように置いてあるクリアジ南瓜。右側は三浦半島で作られている南瓜。値段は倍違い、味は「普通の南瓜」と「あれ?この南瓜ちょっと美味しいじゃん」という南瓜の違い。私ン処では普通のお弁当やランチに夏の間使う南瓜ですので「○○産の南瓜」と講釈やお題目はつけようがありません。でも美味しいものを美味しい時期に使うのは当たり前のことなのでしょうね。


とはいっても、どれほど産地や生産者を声高に語っても料理人が素材を活かしきる能力がなければ普通の南瓜も高い南瓜もだたの南瓜なんですけどね、それが私の一番冷や汗が出そうな問題。