当世若者気質


お隣の美容院の御主人と食事をする機会がありました。時間をかけて育ててきたつもりの若いスタッフが急に辞めてしまったそうです。なれている子だけに戦力的にも厳しくなるでしょう。ご主人自身も美容師という職人の社会で育った方ですので、「若い連中の気質が変わっちゃったんですよねぇ」といいます。


私自身もこの10-15年で若者の職人の世界でも若者の気質は明らかに変わったと思っています。


私ン処はそれなりに長く商売をしていますので、いわゆる卒業生がたくさんいます。祖父の弟子から父、私の弟子まで100人を軽く超える若者が巣立っていきました。祖父の弟子、父の弟子辺り今の40代くらいの卒業生の世代ですと、最初に修行し鍛えてもらったという恩義を十分に感じてくれていて、たまには店に元気な姿を見せてくれました。一時期までは定期的に卒業生の会があって、父のオシメを替えた弟子から、子供だった私の世話を焼いてくれた弟子まで数十人が集まって一泊で宴会をしたものでした。


当時は店に入ってくる若者はほとんどが紹介。親と紹介者が若者を連れて店に挨拶にやってくるのが普通でした。調理師学校などというのはありませんので、人間関係で修行先を見つけたのです。ですから、いい加減でやめてしまっては紹介者にも親にも顔が立ちません。途中でくじけるような若者は、時として親が「申し訳ない」と誤りにくるほどで、三年以下で辞めてしまうものは脱落者のレッテルが貼られてしまいました。


今では顔をつぶす相手もいません。三年以上、十年近く修行する人間は何年かに一人で、簡単に辞めてしまう若者が本当に増えました。「石の上にも三年」なんていう言葉は完璧に死語で、修行先で育ててもらったという意識はなくて当たり前です。親の意識が変わり子供の意識も変わってしまっているのですね。いえ、もしかすると私自身の育てる能力の問題なのかもしれません。