店と客のオーラ

昨日お話した新橋「鮨処しみづ」さんでは、喫煙する人はもちろんだれもいませんでした。あのひしめき合うスペースでタバコを吸われたらかなり迷惑、というよりは拷問に近いでしょう。「タバコの煙がネタについて味がわかる」などとあまりストイックには考えない私でも、あの場所では積極的に止めていただきたいと思います。「禁煙」とはどこにも書いてありませんが、店の雰囲気と集まっているお客様のオーラが「禁煙」を間違いなく醸し出していて、あの場で「タバコ吸ってもいいですかぁ?」と聞くような客はかなり場を読めない客と言えるでしょう(そんなときの親方の態度も見てみたい気もしますが)


「しみづ」さんでは寿司屋でありがちな「焼酎ボトルで頂戴。俺梅割り、こいつは山葵入れてねぇ」などという客もいないはずです。


「この縞鯵の頭焚いてくれない?」とか「この海老で海老サラダ作ってぇ」とかいう特別な注文がお得意の証だとばかりにわがままをいう客もいないはずです。


腰をどっしり落ち着けてビール、熱燗、焼酎をつまみを食い散らかしながら飲みつづけ、友と語り合う、という客もいないはずです。


店のどこにもそれらを拒む店側の要求も但し書きも書いてはありませんが、親方や若い衆(スタッフとは言いたくない感じです)の寿司にたいするひたむきさと、なにより居並ぶお客たちの雰囲気がそれらを拒んでいます。かといって、行列のできるラーメン屋にいがちな「求道者」的なムードに包まれているわけではないのです。


この雰囲気を作り出す店を作り上げ、親方の寿司が好きでたまらないという純なファンを集める求心力と言うのが「鮨処しみづ」さんの親方の素晴らしさでもあると思うのです。


それに比べると、店の中に「禁煙」とか「ベビーカーお断り」とか「香水の強い方お断り」などと数々の張り紙をしないと自分の思うようなお客が集められないと考えているラーメン道を極めようとする流行の店はいかがなものだろうか?・・・・などと店作りの根っこのところを考えてしまいます。