シャンパン話その5

シャンパン話も5回目、ホントはこのお話を一番したくて、前の四回はその前フリ・・・というわけではないのですが、今回は今をときめくレコルタン・マニュピュランのお話です。


前々回、厳しい気候環境のシャンパーニュ地方では皆が自然に集まってシャンパン造りをするようになって、勢い生産量の70%は大手のシャンパンメーカーが造るものである、とお話しました。造り手が少なければ、その多くを制覇することも大変ではない、シャンパン通への道は近い、とも書きました。


実は嘘です。というか近年の状況はそんなものではなくなってきました。2000年以前くらいでしたら、ワイン屋さんに並ぶシャンパンの多くは、モエ・エ・シャンドン、ポメリー、ティタンジェ、リュイナール、ボランジェ・・・・とよく聞く大きなメーカーばかりで店による品揃えの大きな特徴はあまりありませんでした。これらの大メーカーは農家から葡萄を買い取り(自社の畑も持っていますが)集めた葡萄でシャンパンを作るネゴシアン・マニュピュランと言われるメーカーです。全体でも約70社くらいと言われていて(日本には一部が入ってきていました)、世界中に市場を持ち、日本で飲まれるシャンパンのほとんどはこういう大手のシャンパンであったのでした。この数なら制覇できます。


が、
この7-8年でしょうか、小規模生産者のシャンパンが続々と輸入されるようになってきたのです。これをレコルタン・マニュピュランといいます。自社の畑の葡萄だけを使って自分でつくる個人生産者。いわば、ブルゴーニュワインで言うドメーニュみたいなもんです。


「えーーー、そんなシャンパン知らないよぉ、でも美味しいじゃん、個性的じゃん」とシャンパン・アイテムが次々と増えていったのです。実際私なんぞ、以前はシャンパーニュ地方にそんなにたくさんの小規模生産者がいることなど露知らず、ノーテンキにシャンパン御し易しなどと思っていたのでした。


いい土地に畑をもっていれば、自分の畑で葡萄からお酒まで一貫して造るのは理想的なお話です。設備投資の部分でも宣伝広告の部分でも個人の小さな生産者は厳しいのですが、美味しいシャンパンを造るという職人魂には燃えています。日本酒でも1000石以下の極上の小さな造り手たちのお酒はなかなか輸出まで行かないけれども、いい日本酒を造るという誇りには満ちているのと同じですね。



シャンパンの美味しさを知った上に、個人の素晴らしい造り手の状況が見えてくれば、当然興味津々、面白さは倍増です。この状況って10数年前のワインブームの頃のブルゴーニュ・ワインの状況と似ています。ワイン・ブームが始まった当時、ブルゴーニュワインのドメーニュとネゴシアンの違いさえ知っている人は少数派でした。増してや、ドメーニュの当主の名前とか、どこにどのくらいの畑を持っていて、○○さんと○○さんはいとこであるとか、19○○年のクロ・ブジョは例外的に素晴らしいなどというミクロなブルゴーニュ話はやっと1995年前後から素人の間にも広まってきたのです。当時はネット状況も貧弱で、クリック一発でブルゴーニュの痴話話までズラズラあっという間に手に入れてらるようなものではなく、一部の雑誌や本で得た情報を食い入るように見ていたものです。そういう薀蓄話も含めてブルゴーニュワインのオタク的なブームは確立していったのです。


ワインの薀蓄オタクに乗り切れなかったアナタ、シャンパンなら遅くはありません。レコルタン・マニュピュランの流入はまだまだ始まったばかりです。今ならいわば「皆でヨーイドン」の状態なのです。情報もネットとあっという間に得られます。価格を気にしなければネット購買も簡単で、未知のシャンパンもすぐに手に入ります。サイト上の「注目のお酒」で紹介しようと思っているレコルタン・マニュピュランも、ジャック・セロスは以前から使っていても、エゴロ・ウリエとか、ラルマンディエ・ベルニエなんてつい最近飲んだばかり、ソムリエさんだって大きなことをいえないくらいなのですね。


さあ、次のねらい目はレコルタン・マニュピュラン。乗り遅れるな(笑)


といっても、ホント個性的で美味しいから目が離せないンですが。


ついでミニ知識。ネゴシアン・マニュピュランとレコルタン・マニュピュランの違いなんてわかんないじゃんという方、ラベルの下の方に小さく生産番号が書いてあります。ネゴシアン・マニュピュランは”NM-○○○・・・” レコルタン・マニュピュランは”RM-○○○・・・”と表記されています。ラベルを見て「あっ、このシャンパン レコルタン・マニュピュランなんだぁ」なんて小声でソムリエさんだけに聞こえるように言って見る・・・・あざといですが、「この方知ってるかも?」と思われるかも?