名演その13〜ブラウニー

検索システムができて気づいた、以前のシリーズ物の復活です。


その12まで続いていたのに途絶えてしまっていた「名演シリーズ」復活 その13はブラウニーことクリフォード・ブラウンです。


夭折の天才ジャズ・トランペッター クリフォード・ブラウンがなくなったのは1956年。すでに半世紀が経とうとしているのに未だに語り継がれている天才です。


ブラウニーを知らなくてもTVCMで”You would be so nice to come home to”と、かすれ声で色っぽく歌う女性ヴォーカルを聞いたことのあるかたは多いでしょう。「ニュー・ヨークのため息」いわれたヘレン・メリル、唯一のヒットアルバムの中の歌なのですが、このアルバムは「ヘレンメリル ウィズ クリフォード・ブラウン」と題された共演アルバムで、メリルのヴォーカルの後のブラウニーのトランペット・ソロが、たったワンコーラスでもこれがまた歴史に残る名ソロなのであります。ジャズ・トランペットを志す若者は必ずこのソロをコピーし分析します。メリルの歌声には興味がなくてもブラウニーのソロの部分になるとトランペッターは皆でダバダバダ・・・・とスキャットで歌ってしまう、いわばラッパ屋の経典、バイブルといっても過言でない演奏なのです。


このクリフォード・ブラウンは現れたと同時に天才といわれ、たった5年間の演奏活動の後、26歳で交通事故でこの世を去ってしまいました。その間にレコーディングされたアルバムはすべてが完璧なフレージングで彩られ、当時も後も「ブラウニーをすべてコピーすればジャズはできる」というほどの華麗な演奏ばかりなのです。


そしてなによりブラウニーはクリーンであったことも特筆されます。「1950年代のジャズマンは全員麻薬中毒」といえるほどその世界では麻薬が蔓延していました。同じ頃、さらなる天才バードことチャーリー・パーカーが極度の麻薬中毒で神様のようなぶっ飛んだ演奏をしていたのに全員があこがれたのか、「クスリをやれば俺も上手くなる」と信じて、皆が皆麻薬をやていたのです。その中でブラウニーは全くクリーン。酒もタバコもクスリもやらずに飛びぬけた存在であっただけでも皆信じられなかったそうなのですが、さらにさらに若くても人間的に誰に優しくて尊敬される存在であったのです。まさに神様のようです。しかし天の神様は俗世の神の存在を許さなかったのです。26歳で亡くなった後も彼の存在は語り継がれました。



前述のヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウンは、”You would be so nice to come home to”だけでなく”What's New”も”S'Wonderful”もすべての曲が素晴らしい超お奨め。クウィンシー・ジョーンズのアレンジメントもいいのよねぇ。このアルバムをお奨めするのはジャズファンとしては何か気恥ずかしいほどの有名盤です。


このアルバムで惹きつけられたらさらにサラ・ヴォーンとの共演 


そして、ライブの躍動感がこれほど現れたヴォーカルアルバムはないといわれるダイナ・ワシントン・ウィズ・クリフォード・ブラウン


ヴォーカル入りじゃなくてストレート・アヘッドなハードバップをいう方にはスタディ・イン・ブラウン


と、かく言う私はマイルス派でブラウニー派ではないのですが、これほどの天才振りを見せつけられると「はい、すみません。四の五の言わずちゃんと聞きます」と頭をたれて聞きほれしてまう、ファンでなくても酔わせる名演であります。ちょっとでも興味のある人はCD屋さんに走るべし。