悪口

「全くお前ン処は大したことないないなぁ」
「親子三代もやってりゃ、普通なら東京に三つくらい店を持っててもいいはずだぁ」
「いい酒はいらんぞぉ、俺りゃ金ないから」


などなどなど、最初から最後までニコニコしながら悪口、減らず口を言い倒し、すべての皿をきれいに食べ、最後に握手をして「もう少し進歩しろよぉ」と言って帰っていくお得意様がいます。


今回も大切な外国からのお客様の接待のようです。訳のわからないお客様の方が気を使って「全部美味しかったですよ」とおっしゃってくださるのがかえって笑ってしまいます。


愛情表現(といっていいのか?)には色々あるものです。始めてお越しいただいた時にはハラハラしたのですが、やっと慣れました。こういうお客様には私も「えーーー、この素材のよさが理解できないんですかぁ」などと、普通なら口にしないようないいたい放題を言ってしまうのですからおかしなものです。減らず口にどういう返答が帰ってくるかで客あしらいの妙を楽しみ、店を判断しているような処もあるのですね。悪口に凹んでいたり、機嫌が悪くなって接客態度がおかしくなっていたら落第なのです、きっと。お客様との距離感と言うのは難しいものです。というか、こういうほうがわかりやすいかもしれない。