おばちゃんのタイ料理

地元で話題になるそれなりの店のチェックは忘れないつもりでいます。信頼をする舌を持った方のお奨めのお店は要チェックです。


あるお得意様が薦めてくれたタイ料理の店は、いかにも場末な感じ、スナックや一杯飲み屋が軒を連ねる薄暗い横丁にありました。


「えっ?ここ?」


店自体はさらに場末な感じ、ふた昔前のカラオケスナックそのままです。たぶん居ぬきで借りているのでしょう。椅子もテーブルもスナックのそれです。迎えてくれたタイ人の愛想のいいおばちゃんの日本語は片言です。


「だいじょうぶかぁ、これで」


不安を顔に出さないように、壁にカタカナで書かれたメニューをにらみ、おばちゃんのお奨めも聞きつつ何品かを注文しました。


最初に出てきたタイ風のさつま揚げから不安は杞憂であったことがわかります。絶品とまでは言わないけれどかなりいけます。まさにタイのおばちゃんの味です。水割りと簡単なおつまみを作るだけくらいの、調理場ともいえないほどの狭いスペース、家庭用の小さなガスコンロ、家庭用の冷蔵庫だけしかないのに次々と出てくる料理は全部ちゃんとしています。


聞くと17年もここで商売をしているのだそうです。全く見落としていました。未チェックでした。エスニックブームの遥か前からこの地でこんな仕事をしているおばちゃんがいたとは、私のアンテナもさび付きかけているのか?