角田光代
芥川賞や直木賞を取ったばかりの小説なんぞ恥ずかしくて読めない気がして、綿矢りさ「蹴りたい背中」 金原ひとみ「蛇にピアス」でさえ未だに読んでいません。
ところが今回の直木賞 角田光代さんは賞を受賞する直前にBS2「トレッキング紀行」に出ていたのをたまたま見ていて、その人となりに興味が湧いていました。さらに受賞後の「週間ブックレビュー」のインタビュー、「情熱大陸」と続けて見て、受賞作品「対岸の彼女」を読む気になったのです。
久しぶりに手ごたえのある小説でした。病院の待合室にこの本を持っていくのを忘れただけで待つ時間がもったいない気がするのです。ほんの十分の時間でもあれば角田光代の世界に浸りたいと思わせてくれるのです。
映像に現れる角田光代さんはトツトツとした語り口で、言葉で表すことをもどかしく感じているようなのに、一旦文字に表し始めると、とたんに饒舌に心のひだの隅々までを語りだすのです。ほんの数行のエッセイ風の文章でも「書く力」が感じられます。文字の中に生きる人なのです。
「対岸の彼女」読み終わった後にも余韻に浸れる小説でありました。