愚痴

尊敬する料理人ご夫妻がランチにおいでてくださいました。ご主人の料理人としての力量はもちろん、奥様のサービスも私たちがお手本とすべき高いレベルを常に維持なさっている理想のご夫婦です。


そんなご夫婦につい仕事の愚痴を言ってしました。


「お客様のお叱りの言葉に凹むんですよねぇ。玉子料理のなかに殻が入っていたとか、お軸の時期がおかしいとか、お送りしたDMの冬の葉書にカモメールが混じっていたとか、サービスのちょっとした手違いとか。確かにこちらのうっかりミスなんですが、かなりきつい言葉で叱責される方もいらっしゃるんですよぉ。○○さんみたいに完璧な店じゃありえないでしょうが」と私。


「そんなことないのよぉ。毎日スリルに満ちてるわ。そのくらいのミスはウチだってたくさんあるのよ」と、さまざまな失敗をお話しくださいました。


私を励ますつもりでおっしゃってくれたにしても、あれほどの名店でも確かにミスはある・・・と思っただけで少しは救われたような気がします。案外そんな料理店同士の愚痴の言い合うことはないのです。


奥様の言葉で印象に残ったのが「このごろねぇ、確かに批評するために料理店に来るような人は増えたわねぇ。料理を楽しむことを忘れているのよね。楽しんでいただくように努力はするんだけど」というお話。やっぱりいるのですねぇ、同じように批評家のようなお客様。


人の失敗を聞いて胸をなでおろすと言う私もヤナ奴ですが、私たちのように主人があらゆる意味で取り仕切る小さな店でも数限りない失敗があるのですから、チェーン店や店舗展開をしている店、大店舗などのクレームの量と質に耐えられる「社長」という方々の精神力は凄いもんだよなぁ・・・とそいういう方のお話も聞いてみたい気がしたりして。