喫茶店

飲食業界全体が落ち込む中、喫茶店の減少率というのは他に比べてもかなり厳しいものなのだそうです。自分の周りでも、あっという間に喫茶店はなくなってしまったという実感があって、東京の「談話室 滝沢」の閉店はこれまでの加速傾向を象徴するかのような出来事として取り上げられてもいます。


私の世代は喫茶店の全盛時代に青春を過ごしたものですから、「キリマンがどうした」「モカコスタリカブレンドがどうの」という世界各国の豆にこだわった喫茶店があちらこちらにでき、名曲喫茶でクラシックを聞き、ジャズ喫茶でなかなか買えないジャズLPを長時間聞き、友人とちょっとおしゃべりするにも、一人で本を読むにも喫茶店を使いました。何か喫茶店に文化の香りを求めていたようなところがある・・・・といってもドトールスターバックスしか知らない世代にはわかりにくいかもしれません。


仕事を引退したら夫婦でこじんまりした喫茶店でも開いて、好きな音楽を流し、豆にこだわって、器にもこだわって、のんびりとした空間を作って悠悠自適な暮らしをしたい、などという夢は私以上の世代には当たり前のように語られていたものなのですが、たぶん今それを実現しようとするようなチャレンジャー誰もいないでしょう。


チラッとみたフジTVの「優しい時間」という番組では、寺尾聡が演じる主人公はまさにこの引退後の喫茶店を実現していて、喫茶店のウリが「お客様自信に豆を挽いてもらう」という私からするとちょっと「アイタタタ」感覚なわけで、番組の視点自体年寄りの説教じみた傾向を感じてしまうというのは、脚本家の倉本聡の感性で描かれる喫茶店世代が過去のものになりつつあるのかもしれない・・・・というと団塊の世代からヒンシュクを買うでしょうか。


昔引退後の喫茶店を夢見たころには、世の中から喫茶店がなくなるわけはない、と思っていたのですね。中内ダイエーや堤西武に終焉があるとはだれも信じていなかったころのことです。