注文編その1

さて、無事に席に着きました(やっとですね) 日本料理ならお絞りをもってきて「お飲み物はいかがいたしましょうか?」と聞かれます。フレンチやイタリアンでしたら「食前酒はいかがいたしましょうか」です。くれぐれも申しあげておきたいのはお酒が得意でない方が「飲まなくては失礼ではないか」とか「何か注文しないとみくびられないか」と無理に注文することはありません。日本料理店でも申し訳ないように「ウーロン茶をください」と言う必要もありません。「お茶をください」でいいのです。フレンチイタリアンでは「お水をください」でもかまいません。おすし屋さんでも「ビールのいっぱいくらい飲まなくてはいけない」と思う必要はありません。最初から「お茶を」です。おすし屋さんではかえってダラダラ「ビール→熱燗→焼酎」とつまみとともに飲みつづけるよりも本来の仕事である握りをたらふく食べてくださるお客様が嬉しい・・・と聞きます。私ン処でも「じゃ、ビールを」と注文されて一口だけしか飲まないお客様をみるととても申し訳ないような気がします。ですから、昼食時などはコース料理でも積極的に「お飲み物はいかがいたしますか?よろしければお茶をお持ちしますが」と申し上げるようにしています。ヨーロッパでは食事のときに水を飲むのは「カエルとアメリカ人だけだ」という皮肉があるのだそうですが、日本人にはお茶があります。積極的に言いましょう「お茶をください」


フレンチやイタリアンで食前酒を飲むほどではないけど・・・と言う方は最初からシャンパンやスプマンテを頼むのはどうでしょうか。私はほとんどこれです。食前酒から食中まで(もしくは食後まで)通してもシャンパンは違和感がありません。そこでメニューとともにソムリエさんの登場です。


お酒の注文のお話は明日にしておいて、まずは料理の注文です。メニューを選ぶことに時間をかけることを躊躇してはいけません。相客とよく話し、サービスマンと事細かに相談するのがいいと思います。「今日のお奨めは?」「シェフの得意料理は?」「素材は?」「調理方法は?」「分量は?」「料理の組み立て方は?」「好きなもの嫌いなもの」「今日の気分は」マナーをどうこういう店でこの辺に対応できないようなら店のほうにこそマナーをどうこういう資格がないのです。注文の時間を楽しませるような能力をもったサービスマンがいればその店はほぼ間違いありません。こじんまりした店でサービスマンの知識がじゅうぶんでなければシェフ自らが説明をしてくれと思います。料理を食べる以前に食べる側の「美味しいものを食べたい」という意欲と、料理店側の「この人には最上のものを食べていただきたい」という気持ちが一致するのは注文の時なのです。知識をひけらかすことなく客の側の期待を伝えることができたら最高です。もっともいい店はひきらかされた知識を手のひらで転がすようにいい気持ちにさせてくれるはずです。料理店は「出かけていってメニューを見て注文して食べて」だけではなく、そこに人間のふれあいがあって気持ちをよくするのです。高いお金を払うのはファミレスとは違う心の豊かさと満足を買うことでもあると料理店は考えています。


もう一つ大事な予算です。ガールフレンドといっしょで値段のことで安っぽく思われたくない時、接待で相手に予算を知られたくない時、初めての店でも予約の電話のときに必ず予算の上限を伝えておきましょう。お酒の値段も含め予算がわかっているのは店にとってもありがたいことです。何度もいうように店にとっては「高すぎる、もう来ない」と思われることは絶対にしたくないことです。リピーターになっていただきたいのです。お客様の安心できる予算を知らせていただくことはケチ臭くもなんともなくて大事な情報なのです。