食事をする前に 編

料理屋を予約し、服もばっちり、さっ、後は食べるだけと思ったら大間違い。食べる前にもさまざまなことが待ち受けています。


まずは予約の確認。超人気店では早いうちに予約だけして、当日になってなしのつぶてということがよくあります。お客様を万全の体制でお待ちしている店としてはマナー以前の問題、二度と暖簾をくぐることはできません。早いうちの予約はご自身のためにも前日には確認の電話を入れるべきでしょう。予約の当日のキャンセルももちろん困ります。キャンセル料をいただく店も多いようです。よくあるのは直前の人数変更です。止むを得ない理由のケースも多いのですが、ホストだけでなく、メンバー全員が予約をいれてある店のランクをしっかり理解して直前の変更がないようにしたいものです。マナーを云々するような店では、一人欠けただけでも食材は無駄になってしまいます。因みに私ン処では間際(開始30分前くらい)の人数変更ですと、料理の原価くらいをいただくこともあります。



さて、予約の時間に店の暖簾をくぐる時、初めてのしかも高級な店は緊張もします。が、店としてもまったく同じように「どんなお客様だろう」「お気に召していただけるだろうか」と緊張しているものなのです。高級店だから高飛車にでてくるに違いないとか、慣れない客を見下すのではないかなどというのは全くの杞憂です。高いお足をいだたく店であればあるほど緊張の見えるお客様の気持ちを解きほぐす努力をするものです。高級店の経験の少ない方なら、店の雰囲気が高そうであることをむしろ楽しむべきです。「私もとうとうこんな店に来られるようになったんだなぁ」と。そういう満足度もお足の中には含まれているのです。


カップルの場合店に入るのにはどちらが先でしょう。日本料理店では男性が先に暖簾をくぐり、「予約の○○です」と告げるのが姿がいいような気がします。フレンチイタリアンのようにレディー・ファーストの店でしたら女性を先に立たせて男性が後になるほうがいいかもしれません。席につくときの基本は日本料理店なら男性が上座、女性が下座のほうがやはり納まりがよく見えますが、フレンチイタリアンでは必ず女性にホール全体を見渡せるような席を勧めます。彼女の美しさを皆に見せつけるような気持ちで丁度いいのです。細かいことをいうようですが、ホールまでの階段を上がる場合(下がる場合は違います)、それほどまだ親しくない女性をエスコートしているときには男性がさりげなく先に上がってあげるといい感じです。女性の後姿(ヒップの部分)が目の前にくるのは気恥ずかしいものですから。もう一つ、日本料理店で靴を脱ぐときには、玄関の真中に進行方向を向いたままで脱ぐのがいいでしょう。友人宅や上司の家を訪ねるのではないのですから、靴を脱ぎそろえて立てひざをつき反対に向けるのは、礼儀ただしいようでいてあまりいい姿にはみえません。堂々と脱ぎっぱなしでいいのです。迷惑にならないように端のほうに横になって脱ぐのは問題外です。


などとまだメニューも広げていないのにたくさんのことがあるものですね。次はいよいよ注文です。


そうそうもう一つ、初めての店で緊張していても入店の時に笑顔を忘れずに。怖い顔で入ってくるより、笑顔で「今日はよろしくね」って感じのほうが間違いなくお互いに和みます、これ、基本中の基本なのに一見ではなかなかできないことです。