半落ち

横山秀夫半落ち」はいい本でした。


物語の焦点、空白の二日間を動機付けるための真実が弱い、という批評はいやになるほどよく聞きますが、ミステリーとして考えたときの最大のこの弱点は、登場人物の丹念な描写と物語の奥行きの深さの素晴らしさを思えば、「んなことあげつらわなくてもいいじゃん」と私など主張したい名作です。


で、
昨日wowwowで映画のほうの「半落ち」を見ました。


「映画が原作を超えることはない」増してや邦画に・・・・と大した期待もせずにぼんやり見ていたのです。この映画もしかしたら監督、脚本家は原作の弱点を補い、空白の二日間に真実味を与えることを主眼にしているのではないかと思いました。ネット上の私のような素人寸評では「最悪」「人物の描き方が浅い」「俳優の演技にリアリティがない」などなど酷評ばかりです。確かに原作の描く人間像の丹念さを2時間に押し込めることは監督にとっても脚本家にとっても俳優にとっても至難の業です。そこで原作の唯一の弱さをきめ細かく描くことに存在価値を見つけようとした・・・とは考えすぎでしょうか。しかしそう思いたくなるほど空白の二日間はよく描かれているような気がします。俳優もいわゆる脇役と呼ばれる役者たちの演技が素晴らしい。邦画も見ようによっては捨てたもんではありません(とは失礼かもしれませんが)


予算や映画会社の思惑、時間的制約、売れるためのあの手この手というハードルをクリアしながらもいい映画を作ろうという意欲がヒシヒシと感じられるというだけで、やっつけの批判をするのはしては申し訳が立たないような気がするのです。まじめに物つくりにたずさわる人間には甘甘の私なのでした。



休日、映画館では話題の「レイ」


ジェイミー・フォックスの演じるレイ・チャールズは見る価値があります・・・だけでは言い切れないほど素晴らしい。