チョコレート

昨日見た「ネバーランド」があまりに見事な映画でしたので、同監督マーク・フォースターの前作、見逃した「チョコレート」をDVDで見てみました。ハル・ベリーが黒人女性として初めてオスカーを獲得したことで記憶に残っていた映画です。


アメリカ ディープサウス、親子三代刑務所の看守を勤める主人公は、病気で衰えた父とともに根強い人種差別主義者です。近所に住む黒人少年へもやさしい新人の看守である息子に情けなさを感じている主人公は、仕事上の失敗への怒りから息子を自殺へと追いやってしまいます。一方ハル・ベリー演じる死刑囚の黒人妻は、夫の死刑執行の虚脱感に追い討ちをかけるように息子を交通事故で無くします。肉親を無くしあった二人が偶然に出会いお互いの喪失感を慰めあうように惹かれていくのです。あれほど憎んでいたはずの黒い肌をした女性をいたわることに、もはや主人公は何の疑問も感じなくなるのですが、彼が夫の刑を執行した男であることは明かしません。。。。


白人の主人公と黒人女性の心の葛藤と、揺れ動き次第に変化していく微妙な心情を、抑制の効いた演出で表現していく監督と、演じる俳優たち。オスカーの名に恥じない名演のハル・ベリーは最後のシーンだけでも観客を引き込みます。


暗くてやりどころのない状況と、このまま進んでどうなるのだろうという閉塞感にもかかわらず終わったときには心の中に何かを残してくれたように思うこの映画は、監督、俳優、脚本家の才能のどれひとつがかけても成立しない危うい映画でした。マーク・フォスター監督要チェックです。