割っちゃったぁ

修行時代のことです。調理長が仕事をしているすぐそばで、調味料の入った瓶を床に落として割ってしまいました。


「ガッチャーーン」
「アホッ!大丈夫か!」
「スンマゼン!!合わせ地の瓶を割ってしまいました」
「アホォ、大丈夫かって、怪我してないかってことやぁ」


ホロッとしつつ、この人についていこう、と思ったものです。


煮方が丹精こめた合わせ地を台無しにしてしまったことよりも、怪我がないかと気遣ってくれる気持ち。とっさの時にすぐ出てくるというのが本物である証拠です。


高価な器や、時間をかけて作った料理を不注意で台無しにしてしまったとき、部下が失敗したときのとっさの一言で上にたつものの器量が問われるものです。私自身はちっとも学んでいませんが。