味が落ちた

休日の夕食を共にしていた友人が言いました。


「○○さん、新築開店して味が落ちたって聞いたけどホント?」


即否定しました。
「絶対そんなことないよ。ありえないもんあの店は」


新築して開店したその店は、私ン処なんぞ問題にならないほどの老舗中の老舗。しかも新築や代がわりで、新しい商品をバンバン企画することもせず、代々の仕事を受け継ぎ、支店やデパートへの進出も頑なに拒んでいる地にい足のついた商売をしている店です。私など、いつ仕事場をお父様から息子さんに受け継いだかもわからないほど、代がわりもスムースにいっているように見えました。


それでも口さがない雀たちは、新築したイメージだけで「味が落ちた」と噂したりします。


代が変わった、新装開店した・・・・その後味が落ちたという話を聞いたりすると、「どこが?」「どれくらい?」「具体的にどれほど?」とむきになって否定したくなってしまいます。それほど「落ちた」と口にする方のお話は感覚的でいいかげんなことがあります。簡単に「落ちた」と言うのです。


以前に寝たきりの先代が亡くなった料理屋さんが、「味が落ちた」という噂になったとき、後継者の息子さんがが言ったそうです。


「オヤジはもう15年も寝たきりでずっと私が調理場をやっていたのに・・・・なんで?」と悔しがったとか。


人の舌などそんなもの、人の噂などそんなものなのです。