長谷川きよしさんライブ

長谷川きよしさんのギターは最初の4小節で私の心を鷲掴みにし、その歌声は最後まで頭の中をトロトロにしてくれます。


小さなバーで行なわれたサロンコンサートのようなライブは目の前という迫力もあって、長谷川さんのパワフルな音の洪水に酔いしれました。


普段洋モノばかり聞いていると、理解できない歌詞には注目しなくなりがちですが、長谷川さんの歌は日本語できちんと訳されていて歌の内容がスルスルと心に響きます。ギターテクニックはいつもながら恐ろしいほどです。すでにCD、LP、TVで「別れのサンバ」だけでも何回聴いたのか憶えていませんが、一度として同じギターフレーズを弾いたのを見たことがありません。当然のように毎回違っていて今回は一段と即興的でそそります。


私達の世代には「別れのサンバ」衝撃的なデビューが未だに頭の中に焼きついているのですが、つい何年か前にアルバム「アコンテッシ」で魅了され、今でも精力的にライブ活動をしていらっしゃることを知って嬉しくなったものです。TVに出なくても高いレベルで活動をしているミュージシャンはいるのですね。


「○○さんのライブがあるから」と店を休みにしてしまったのは初めてです。というと大げさですが、目と鼻の先にあるバーで長谷川きよしさんとパトリック・ヌジェさん(歌手アコーデオン奏者)デュオのサロンコンサートがあると知って、どうせ日曜日ならこのところの忙しさを考えて連休にしてしまえ・・・・と、店はお休み。


ところがこのバーでは、休憩するスペースも食事をしてもらうスペースもないということで、「親方、長谷川さんのご飯と休憩中のデザートコーヒー作ってくれない」とお話をいただきました。


スタッフは全員休みでも、私は長谷川さん達のためだけに料理を作りデザートを用意しました。


なにしろ私ン処はミュージシャン、芸能人に縁のない店です。右隣には秋吉敏子さんがいらっしゃり、左隣には山下達郎さんがいらっしゃり、お迎えには浜崎あゆみが来ているというのに私ン処はなし、だれもいらっしゃっていません。ミーハーとしてはかなり悔しい。


が、
今回憧れの長谷川さんです。お食事だけでなく、二度の休憩、着替えなどお世話をさせていただく光栄。会場と店をあわただしく行ったり来たりする事だってちっとも苦になりません。


お世辞がほとんどとしても、料理に満足してくださり、サービス中にもいやな顔一つせず気軽にお話してくださいました。長谷川さんご夫妻、ヌジェさんご夫妻とも気遣いの行き届いたやさしいお人柄で、演奏のようなアグレッシイブさは微塵もありません。音楽だけでなく人間味にも直接触れることができて益々ファンになりました。


今回のライブは名盤CD10枚分以上の感動を間違いなく私の心に残してくれました。