スタイル

街のお寿司屋さんでよく見るタイプ。二人もしくは三人くらいでまずはビール、つまみを少々頼み、お造りを頼んで日本酒もしくは焼酎に移行して、焼いた魚やら海老サラダ、語り合い、タバコをふかし・・・・最後にご飯代わりに数貫を握ってもらってお終い。お寿司屋さんのカウンターは飲む場所で語る場所、という常連客をよく見かけます。当然、店はお客様のニーズに合わせるように握りのネタ以外につまみ類や一品料理をそろえます。


ところが私が好きなお寿司屋さんは、お客様の流儀にお寿司屋さんが合わせるのではなくて、お寿司屋さんの流儀を楽しむために伺うというスタイルです。昨日お話した「與兵衛」も当然その類です。


独創的な前菜数種類の後に続く握りの数々は、親方のスタイルで構成されていて、満席だったカウンターに並んだお客はすべて同じ「お任せ」「お決まり」でコース料理のように進行していました。そこには「海老サラダ頂戴」とか「塩焼きかなんかないのぉ」というお客はいません。さらにもちろん、お酒を飲むことを主眼に来店するお客様も、友と語ることを目的に来店するお客様もいそうにありません。ご主人の寿司が目的なのです。ご主人の技術と人柄、美味しさを食べに場末といってもいいところへわざわざ出かけるのです。


そういうスタイルを確率するというのは難しいことなのですが、なによりそれを支持し、スタイルを楽しむお客様だけを集めるのが大変なことなのです。


昨日カウンターに並んだお客はすべて30代と見えるカップルばかりでした。しかも全員が常連風。私が一番年寄りというくらいです。こういう店に若い方々ばかりが居並ぶというのも当世の気風を現しているのかもしれません。


考えてみると自分自身もわざわざ出かけるべきそれなりのお値段のお寿司屋さんに通い始めたのが20代後半から。それでも回りの大人達を見ると自分の若輩加減が恥ずかしくて、何回暖簾をくぐっても小さくなって常連を気取ることなどとてもできませんでした。堂々と親方と寿司談義をする若い方々をみると、肩肘張っていない姿が頼もしいような気恥ずかしいような妙な気分になります。変わったものです。