楽しむ能力

先日の休みのこと、家族でビストロのランチを楽しんでいました。普通のものを真っ当にきちんと仕事をするご夫婦のこの店は、いつでも安心して利用できます。


そこに入ってきた中年のご夫婦がいました。一見なのかお得意なのかはわかりませんが、むっつりしたまま入店し、ぶっきらぼうな注文、食事中も夫婦で話はしているのですが、食事を楽しんでいる風ではありません。そそくさと食事を終えて帰るときもニコリともせず、「ごちそうさま」でもなく。


サービス担当の奥様に聞いてみました。「大変ですねぇ。なにかご機嫌が悪かったのかなぁ?」「いえ、いつもあんな風ですよぉ。結構多いですよ、笑顔のないお客様って」


料理にもサービスにも落ち度のない店でもそんなことがあるのです。というより、そんなお客様というのが案外多いのです。


ニコニコ、店に媚びろとは言わないのですが、お金を払って食事をするなら、楽しむ気持ちを前面に出したほうが絶対にお得です。サービスも調理場も楽しむ気持ち満々のお客様にはやる気になります。どんなお客様にも公平に・・・・というのは当たり前ながら、やる気にさせられるお客様がいることは確かです。


いつだったか、とある掲示板で、私達が時々うかがう料理店のサービスがなってないと不満の声が上がっていました。「えっ?あの店で?」と私にしてみると不思議です。私達が伺うとサービスはあくまでにこやか、料理の説明も満遍なくて、シェフも何度も「どうですか?」と顔を出してくれます。もちろん、こちらは楽しむ気満々であること、「美味しい」ことを積極的に表現しているつもりです。


もしかすると、ご不満のお客様は「むっつりさん」ではなかったか?やる気を出させるお客様でなかったのではないか?・・・・という疑問がおきます。本来料理屋たるもの、お客様を楽しませるのが勤めであって、その逆は本末転倒であるとことは重々承知しています。それでもやっぱり「困っちゃったお客」は確実にいます。


先日花博でおいでになった東京からのお客様がいらっしゃいました。一見のお客様でしたが、予約の時間ピッタリにお見えになったお二人は「いらっしゃいませ、ようこそおいでいただきました」のお出迎えに、ニコニコ「よろしくお願いします」・・・・とすでに楽しむ気満々であることがよくわかります。メニューから飲み物を選ぶときも、最初の一皿をお持ちするときも、こちらのやる気をださせる一言が必ずあります。「このお客様には絶対に楽しんでいただきたい」と思うのが人情です。


同じお金を出して、同じ料理を出しても、喜んでいただいたという実感を得られるお客様と、何か不手際でもあったのだろうか?という不安にかられるお客様とがいます。お客としてもどうせなら店の能力の120%を引き出せるお客になってみたいもんです。