素性の違い
甘鯛、白甘鯛(白川)のたぐいというのは海の底の方に生息してるために、釣り上げたときには元気がなくなり、鯛や平目のように活きたままで運ばれるということがほぼありません。
ごくたまに「活かし(いかし)」で入る甘鯛、白甘鯛(白川)は1kg前後で、活け締めにしても身にしまりがなく、「やっぱり甘鯛、白甘鯛(白川)は昆布締めにしないとだめかぁ」と思っていたのです。
ところが先日「親方2kgの生きてる白川です。どうですか?」と
「白川は生きてても値段が高いだけで活き身で食べられないしだめかなぁ・・・」と言いつつ、購入しおろしてみるとこれが大違い。
素晴らしい。
身がしっかりしています。別の品物です。
三日後さらに1.5kgの白川が・・・・・これも同様に素晴らしい。
1kgでは活き身で使えないのに、1.5kgを超えると素性が変わります。500gの違いが魚を変えるのです。
昨日手に入った佐渡沖の寒鰤は17.5kg。
寒鰤は10kg以下のものは使いません。できれば13kgオーバー、氷見もしくは佐渡沖出なければだめです。
ところが今回のような17kgを越える大きな鰤はめったに入ってきません。
これも魚の素性が違うのです。10kgとは別のお魚、13kg超のものとも脂の入り方が違います。身質が違います。
「北陸辺りで食べる鰤はうまいんだぁ」とおっしゃりながらこの鰤を召し上がる方は、味を気分でしか味わっていません。寒鰤のように5時間10時間の鮮度の問題よりも大きさによる熟成が味に深く関わる魚は、金沢だから美味い、浜松だから不味いではなくて、どの産地のどれほどの素性の魚を手に入れるかが大事なのです。
息子の何も言わずに食べさせると、いくつかの寒鰤を食べているヤツは「これ、すげーーー美味い!」と。。。。ホッ。
これが頭だけの薀蓄男と舌だけ男の違いです。
魚の素性を見極めるというのは経験がものをいいます。
板前、まだまだです。こんな歳になっても経験はまだまだ増えていくのですね。