やせ我慢


「親方、この京菊菜、お安くしときますんでまとめてお願いできませんか?」


「親方、この白川(白甘鯛)掛け値なしお願いします。親方しかいないんですから」


「親方、この超早掘りの筍、具合をみてくれませんか」


お世辞半分とはいえ、仕入れるほうもやせ我慢をしていい品物をなんとかこの地にも根付かせようとがんばっています。だいたい、いいものは当然値段もそれなり、気軽に買う料理店さんも限られてきます。


買うのはおだてにのり易いわたくしのようなヤツか、本気でいいものを使いたいと思っている料理人。


いいものなのに買ってくれる人が少なくてあまりそうになる・・・・少々でも使っている私ン処に回ってくる・・・・がんばってさらに使う・・・・やせ我慢以外のなにものでもありません。


それでも、私ン処のお客様はやせ我慢にお付き合いしてくださるだけ恵まれています。


高い京菊菜なんて使わなくても、この辺の菊菜でいいじゃん。


白川なんて高い魚を使わなくても、養殖の平目だってお客様はわかりゃしない。値段は1/3。白川を三切れつける値段で養殖平目と適当な鮪と烏賊でたっぷりのお刺身一皿ができる。


早掘り筍なんて使わなくても、中国産の筍がもうすぐ出てくる。


値段が高いから、お客は理解しないから・・・・と言っていたら、田舎町は田舎町のままです。


京都の○○で食べてきた。東京の○○で贅沢してきたと自慢するお客様の多くは田舎町では財布の紐がかたいことも事実です。ハレの場所では思い切りがよくてもケの場所では・・・・と思われること自体我々の精進が足りない証拠かもしれません。


やせ我慢でがんばっている食材屋さんがいてくれる以上、こちらもやせ我慢で応じる気概がなければいつまでたっても田舎町は田舎町のままなのです。


がんばる・・・ではなくて、それが当たり前であること、5年前よりはちょっと近づいてきています。挫けずコツコツと。