素性


料理人の力量というのは一皿か二皿食べれば大概推し量れるものであります。


どれほどいい素材を使っても、反対にどこにでもある素材を使っても、力のある料理人はどこかにきらめきがあるものです。


以前に新規に開店されたあるフレンチレストランに伺ったとき、開店間もないせいか、メニューの組み立てに悩みがあるのかコース全体がなにかちぐはぐなのに、私にはシェフの力がちらっと感じられました。連れ合いはそのときだめなら二度と行かない・・・・という厳しい舌を持つ人なので、「ここはだめね」と一刀両断に厳しい判断をしていたのですが、私は「いや、しばらくしたらもう一回」と考えていました。


そこんところが普通に食べる人と、料理人で食べる人との違いなのでしょう。


本来お足を頂戴する以上いつでもベストの料理を出すべきではあるのですが、完璧になりきれない悩みや、ちょっとしたミスの積み重ねの失敗があることもよくわかってしまうのですね。


件のレストランも二年後に伺うと見事に復活していました。


献立ががらりと変わり、シェフの本来の力量が表れる料理です。


ネット上のある批評でも酷評されていて「ああ、この人も一回で切って捨ててもったいないことを・・・」・・・と。


美味しい店も探すのも、料理人を育てるのもほんのちょっとの長い目と冷静な判断が必要なのかな?と思ったりします。


逆にメディアで持ち上がられる料理人が実は凡庸ということもよくあります。私たち料理人から見れば「なんでこの人のこの料理が?」と思ってもTVや雑誌でやることは正しい・・・・という風潮もあることも事実なのですね。