隠れた名人


さ、そろそろ寝ようか・・・・とTVを消そうとしたら。


「ウワッ!びっくりした」


すぐ目の前のトンカツ屋「幸楽」さんのご主人がTVに出ているではありませんか。しかも地方局のグルメ番組ではなくて、TBSのこの番組


いきなり全国デビュー、シンデレラ誕生を見るようです。


すでに地元で脚光を浴び行列ができるほどの話題になっている店ならともかく、いままでメディアに取り上げ続けられたという方ではありません。むしろご本人がそういうのを嫌っていたのかもしれないとおもうほどの隠れた店です。


歩いて20歩ほどの近所ですので、店で食べるよりは「○○時に五人前お願いします」と暖簾越しにお願いして届けていただく・・・・くらいの食べ方をしていて、長年地道にとんかつを揚げ続けている腕の確かな職人さんです。


私たちの地元に根付いている普通に美味しい、真面目な職人さんご夫婦の店が全国区で有名になるのは嬉しいことなのですが、取り上げられかたを見ると少々不安を感じます。


神の業を持ち、信じられないほど美味しい・・・・・かのように扱われると、ほかのメディアや、批評のために一度だけ押しかけつ素人グルメ評論家に弄ばれ、店が荒らされてしまうのではないかと思うのです。


メディア・プロデューサーを使い、TVや雑誌を利用することで利潤の追求を目的にする料理店とは違います。


腕の確かな妥協をしない職人さんを「天才」「神様」扱いするのはかえって失礼です。ご本人は当たり前の仕事をこつこつとずっと追い求めているだけなのです。


美味しい店が全く知られずに苦労なさっているのを見るのは辛いものですが、いきなりの過剰な反応もどうかと思います。


確かなものを正当にきちんと評価して、長い時間通いながら店をはぐくんでいくべきです。


TVをきっかけに行列でもできたら、並んでいる連中を薄ら笑いを浮かべて見てやります。


が、
あの真面目なご夫婦のことです。浮かれて店がおかしなことになることは決してありえないでしょう。


なにしろおかしな客でも来ようものなら空手の達人でもあるご主人が黙っていません。


昔、やくざ風の阿漕な客が、ご主人に「ちょっと表へどうぞ」と誘われてそのまま二度と現れなかった・・・・・という逸話もあるのですから。