ドゥルス・ポンテス


最近の芸能界では、アイドルといえども歌がそこそこ上手いと感じるのは当たり前になりました。素人に「上手い」と思わせてしまうくらいのテクニックは、簡単に身についてしまう時代なのです。


昨日、ウオーキングの友に選んだドゥルス・ポンテス「プリメイロ・カント」は一年ぶりくらいに手に取りました。改めて聞いてみると、ポンテスという歌い手はただの上手い・・・・ではなくて「恐ろしいほど上手い」歌い手です。


ヨーロッパの片隅ポルトガルから世界発の音楽を創るには英語で歌い、英語を自在にこなすことが大前提です。アバがスウェーデンからワールドワイドのスーパースターになったのも、アストラット・ジルベルトのアルバムが世界中で売れたのも母国語以外に英語で歌ったからです。


が、ポンテスの歌うポルトガル語は全く理解できなくても、その情念のようなものが歌声だけで心へ響いてきます。「どんな意味なのだろう」と歌詞カードを見させてしまうような圧倒的な力を持っています。


日本デビュー作ですでに歌の上手さはわかっていたのですが、プリメイロ・カントまで約三年、歌唱力だけでない音楽の創造性が飛躍的に広がったアルバムを創る歌手へと成長しています。あれからからまた三年、極東の片隅からヨーロッパの片隅の歌姫の動向が気になるというのは彼女の音楽性の高さゆえです。


日本語で歌った歌が世界中で聴かれる・・・・・そんな歌い手が日本にいるでしょうか?


日本の若者が悲しそうな顔をしているのは、自分の能力が世界で認められないことがすでにわかってしまっているから・・・・・なのだそうです。本格派と呼ばれる日本の若い「自称アーティスト」が一年に二枚も三枚もアルバムを出す、消耗品としてのマーケッティングに乗っかってしまっているのと比べると、人の心を鷲づかみにしてしまうアーティストとしての力の差と、音楽を理解する民度の差を感じてしまうのです。


ドゥルス・ポンテス「プリメイロ・カント」初めて聴いてから三年ですが、すべての音楽ファンにお奨めです。