講師〜人生訓


日曜日に出席した結婚式で「人生訓をたれるな」と自らを戒めたばかりなのに、昨日月曜日に調理師学校で「職人とはかくあるべきである」としたり顔で説教をたれてきてしまいました。


毎年この時期に調理師学校の講師をしていることは以前にも書きました。


二時間弱、100人くらいの学生達を相手に料理の実演をします。


調理師学校の生徒といっても、素人に毛も生えないほどのヨチヨチです。多分私が実際に実演して見せ、お話した料理の内容は3割も理解してできないと思うのですが、学校で習うことと、現場で日々取り組んでいることの違いを実感してもらうことが一番大事なのではないかと、やさしくわかりやすい授業ではなくて、難しくて唖然とする内容にしています。


大体、玉子焼きを習い始めたばかりの子に「鱧は舞阪産を使うべきである」とか「三河産の赤むつをこのように処理して、北海道産の軟白葱と・・・」と言ったって、その素材自体を見たこともないわけですから、ピアノを習い始めたばかりの生徒にベートーベンの後期ピアノソナタを教えるようなものです。


それでも調理場という現場にまだ足を踏み入れたことのない若者に「おお、実際にお金を取る料理というのはこういうものか」・・・・とあわよくば冷や汗の一つもかいてももらえば成功であると思うのです。


私にしてみれば、唖然とし、冷や汗をかいた若者のうち一人二人でも「あんな仕事ができるような職人になってみたい」と私ン処の門を叩いてくれたら嬉しいものです。


というわけで、講義とはいうものの、就職斡旋活動のひとつであるのですが、「あんな店は厳しそうでやれそうもない」と引いてしまう生徒のほうが多いような気もします。


気迫のある子よ・・・・来たれ。