違いがわかる
日本酒における新鮮信奉については何度も書いてきました。
日本酒は新酒が美味しい。封切り直後のお酒がベストである。封を切ればどんどん落ちる。
などなど
一度信じ込んだ方の頭をおきほぐすのは大変です。
日本酒の味の変化についてはとても興味があります。酵母と酒米によって味の変化は様々です。
今何種類か手元にある鑑評会出品酒は、物によってはコンクール当日にあわせてあるのではないかと思うほどの造りをしてあることがあります。これから出品しますというボトルをいただいた時の爆発的な香りと、出品後一ヶ月位してからの香りは明らかに違いました。(かといって今がまずいわけではなくて違う特性が楽しめます)
逆に、いったん封切りして一週間後くらいから使い始めると味がなじんで美味しいというお酒もあります。
同じ酵母同じ山田錦を使ったお酒でも、すぐに飲みきったほうが美味しいお酒と、半年後に劇的に美味しくなるお酒があったりもします。
熟成も10度以上で進めると早く味わいを増すものもあれば、冷温でゆっくり進めたほうがいいものもあります。
冷温で管理すれば味の変化が非常にゆっくりとしたお酒もあれば、早いお酒もあります。
愛知県の「義侠」や島根県の「王禄」、岐阜県の「達磨正宗」のように、熟成の方法と期間をしっかり見据えている蔵もあることはあるのですが、全体としてはまだまだ少数派です。
ですからお酒を実際に提供する私たちが、ひとつひとつのボトルについてその味わいと変化について腰をすえて見つめていかなくはいけないと思うのです。
「今封切りするお酒のなの。そりゃ美味しいぞ」というのも「いつ開けたかわからないようなお酒を出すのはけしからん」というのも、私にとっては見当違いなお話なのですが、ご理解をいただけるようになるには長い道のりが必要です。