最初の本


季節は夏休み、読書感想文の時期です。


死にたくなるほど嫌いだった読書感想文は、考えてみれば読むべき推薦図書というにわくわくするよな面白い本がなかったのだと思い至るわけで、いやいや読む本にいい文章が書ける訳がなかったのです。


今では「普通に本好き」程度にはなっているのですが、子供頃は図書館の読書カードは真っ白、小学校の頃に覚えているのは野口英世の伝記本と十五少年漂流記だけ。進んで本を読みたいなどとは一度も思ったことがありませんでした。


変わったきっかけは中学のときに読んだ下村湖人の「次郎物語


言うのもはばかる絵に描いたような定番で恥ずかしいのですが、実際純真無垢な読書カード真っ白少年には感動的な本だったのです。


「この人は信頼してもいいな」と思うような教師がそろって「今読むべき本」にあげていた「次郎物語」は半分だまされたように読んでみると、「ああ、この人のごとく生きてみた」と感情移入してしまうような内容でした。


本らしい本を読んだこともなかった子供には、文庫でも三巻くらいの長編を読みきった達成感も気持ちのいいものだったのでしょう。


いずれにしても本というのは面白いもんなんだと知ってからは、順調に好きな本だけを読み読書感想文の呪縛から解放されたのです。


子供たちにも「”次郎物語”は読んどきなさい」などと言う時代錯誤なオヤジなのですが、それがきっかけで本好きに生まれ変わることは全くないようです。


今だったらどんな本が転機になるのでしょう。


読み返してみようかな「次郎物語