おもしれぇぇ


視力をなくし、二人暮しだった父に死なれ、一軒家で一人暮らしをするミチル。すぐそばの駅で殺人事件が起こり、犯人として追われたアキヒロはミチルの家に逃げ込んだ。見えないミチルに気付かれないよう、こっそりと同居するアキヒロ。そのうちミチルはアキヒロの存在に気づき始める。二人だけの奇妙な空間。相手は気づいていることに気づいているのか?二人をめぐる人間関係が殺人事件の伏線となって、単純そうだった事件に絡み合った糸がときほぐれていく。


わーーーー、おもしれぇぇ。「暗いところで待ち合わせ」


作者の乙一(おつ いち)を読むのが初めてでした。恥ずかしながら乙一の存在さえ知りませんでした。


聞くと1978年生まれ。すでに16歳でデビューしているのだとか。若い強力な才能に嫉妬してしまいます。


本を読むことはそれなりに好きではあるのですが、乱読のくせに読書範囲が範囲が狭く、人様に自分の好みを紹介できるほど説明も上手くできませんので、このサイトで自分のおもしろ本を紹介することはあまりしていませんでした。大体本のあらすじや読みどころを言い表すなど死ぬほど苦手です。


好きな音楽にしても、何千本あるか数えたこともないLP、CD、VIDEO、TAPEの中からどなたにもお奨めできる名盤・・・となると全体の数%しかありません。趣味の異なる様々な方々に、納得していただくことの難しさというのは音楽でも文学でも同じです。


乙一のような凄い才能をしらなかったのと同様に、ネットお得意様から教えていただいた音楽にも知らない著名な音楽家がいました。


難しかったと書いた映画”THE HOUR”(めぐり合う時間たち)で、心に残る音楽を創造したフィリップ・グラスは、他の映画でも音楽を担当していたことを知ってはいたのですが、どうやら20世紀を代表するような(もちろん21世紀でも)音楽家らしいのです。無知がお恥ずかしい。全く知りませんでした。


同じ方に、やはり私が紹介したジェシー・ノーマンのアルバム”Les Chemin de l'Amour”で、デュパルクの「旅への誘い」の詩がボードレールであることも教えていただきました。


「そこは秩序と美、光、静謐そして豪奢が支配するところ」


ノーマンの歌声とメロディーラインにだけウットリしてた私に、さらにこのアルバムの気づいていなかった素晴らしさを教えていただきました。


うっかり粗忽者の私の知らないところに、感動の世界はまだまだたっぷりあるのです。


これから読もうとしている歌野晶午「葉桜の季節に君を想うこと」も評判が高そうです。楽しみ。