ジェシー・ノーマン


あまり馴染みのない音楽やプレーヤーの演奏を聞くとき、よく知っている曲をやってもらうと一気に親しみがわくことがあります。逆にCD全編通して未知の曲の場合は、聞くのに苦痛のこともあります。


ところが稀有のソプラノ歌手ジェーシー・ノーマンは当てはまりませんでした。


ジェシー・ノーマンがフランスの有名な作曲家ミッシェル・ルグランと競演し彼の曲を歌っているアルバム、”I was born in love with you”は”The Summer Knows”や「シェルブールの雨傘」などという超名曲、しかもロン・カーターのベース、グラディー・テイトのドラムスという最上のサポートであるにもかかわらず、今ひとつ惹きこまれるというところまではいきません。十分いアルバムではあるのですが。


同じフランスの曲ばかりを集めた”LES CHEMINS DE L'AMOUR”(フランス歌曲集)はデュパルク、ラヴェルプーランク、サティなどの一般にはあまり知られていない曲をダルトンボールドウィンのピアノだけで歌っているアルバムなのですが、これには圧倒的に惹かれます。未知の曲ばかりでも毎日聞き続けた時期がありました。このアルバムに出会って「ジェシー・ノーマンは歌声は神の声だ」と感じたのです。


偉大なアーティストが世間で言われる名曲を、名人たちのバックアップで歌ったアルバムと、語り継がれると言うほどではない曲を同じアーティストが丁寧に歌ったアルバムでどうしてこれほど魅力が違うのでしょう。「私が」そう感じるだけなのかもしれませんが、全く不思議です。言葉では分析できません。


というわけで、歌声に興味のある方には是非聞いていただきたいアルバムです。JESSYE NORMAN ”LES CHEMINS DE L'AMOUR”あなたには神の声に聞こえるでしょうか。