四年の歳月


四年ぶりのご来店でした。


その方がある大会社の浜松支店の支店長をなさっていらした頃、仕事上でもプライベートで奥様とも頻繁においでいただいていたのですが、今は東京本社のふかふか絨毯の上にいらっしゃいます。


名古屋での仕事を終えた後、本当にしばらくぶりにお越しいただきました。


料理やお酒をたくさん褒めてくださると言うほどではないのですが、つぼを心得ていらっしゃいます。お造りをお出しすると、「気合が入ってますねぇ」・・・・と、それだけでもこの方に言われると嬉しくてならないのです。一生懸命やっているところをちゃんと理解してくださって、そこを的確に認めてくださいます。


この地にいらした頃、一度だけ支店の部下の方々とご来店になったことがあって、普段は見えない仕事での厳しい姿勢を垣間見たことがありました。中座されたとき部下のお一人が「支店長はめったに褒めない人なんですが、親方の処のことは褒めますもんねぇ。」とおっしゃっていただきました。お世辞半分としても嬉しい。


思い返してみると、新装開店して半年後くらいからお見えいただくようになって、当時は新しい店作りのために何もかもが試行錯誤の連続でした。そんな頃その方の評価というのはある意味私のひとつの指標でした。その方に認めていただきたくてひたすら素材に向かっていったというようなところがあったのです。その方の一言のお褒めがいただければ山をひとつ越えられたような気がしたものでした。


お忙しい中思い出しおいでいただいて、果たして私は四年分の山を越えることができていたのでしょうか?