ブラウマイスター


私ン処の標準生ビールはブラウマイスター琥珀の時間という二種類のビールです。


三年ほど前にキリンービールが、飲食店限定で季節ごとにビールが変わるというシリーズを出したことがありました。


夏には夏用、秋には秋用、冬にはクリスマスビール。


「おっ、やるじゃんキリン」というほどいい企画で、お客様にも大好評のビールであったのですが、発売から半年、クリスマスビールにいたる頃にはこの企画に乗っかったほとんどの店が売れなかったり、お客様にうまく提案できなかったりしたようで一年経たずにぽしゃりました。


私ン処ではあんなに評判よかったのに。。。。


で、
キリンビールの営業担当さんにちょっとごねてみました。


「うちではあんなに広まったにどうして止めちゃうの?これで普通の生に切り替えてくれっていっても無理だよ。お客様が納得してくださんないよ」と。


そこで営業さんががんばって入れてくれたのがブラウマイスターでした。


「ホントはキリンシティだけで飲めるビールですので、正式な名前は公表しないでくださいね。内緒ですから」


一般料理店では私ン処だけ・・・・・というほどではないにしても、全国でもキリンシティ以外ではあまり取り扱えないビールのようで、味的にも私ン処のお客様が「美味い」とおっしゃってくださるビールでした。もちろん「営業さんの首があぶない」(ホントか?)ということで正式名称は内緒にしておきました。


ところが、この4月からキリンの方針転換でビール職人の生が廃止され、ブラウマイスターに一本化されて、ブラウマイスターは頼めばどの飲食店でも扱えるビールになりました。


得意の”私ン処だけ”が”いつでもどこでも”になってしまったのです。


もう内緒ではありません。


珍しくなくなちゃったビールになって、キリンの営業さんががんばっているにもかかわらず、このブラウマイスターは巷の飲食店に全然売れないのだそうです。ここでも値段が少々高いことがネックのようです。日本のビールの中では珍しく美味しいのに。


少々割高でも美味しいほうが。。。。というのは時代には合わないのですね。


このままでいくとブラウマイスターの企画自体がなくなってしまう可能性だってあります。


特にビール業界は期待した地ビールが似たり寄ったりで、大手は不景気に押されて発泡酒へシフトしています。


美味しいものであれば少々の値段は・・・・というのはどんどん少数意見になり、大手は少数意見を切り捨てます。


企画と値段とCMでバカ売れでなければ生き残れない時代なのでしょうか。


ブラウマイスターのように、物造りの造り手としての誇りのようなものが感じられる商品を売れ筋でないからといって切り捨てるようなことがあると、職人としてのよき人材まで抹殺してしまう可能性だってあります。


大手がマーケッティングだけにとらわれず、自社の誇りのために造り続けるビールってのは生き残れないのでしょうか、またそういうビールはもっと生まれないのでしょうか、日本では。


聞いてるかなぁ、会社の偉い方。


地方の片田舎の小さな小さな料理屋で、ちゃんと理解してくださるお客様が、綺羅星のような日本酒やワインと肩を並べて飲まれているビールです。


もっと、さらに美味しいビールを、物造りの誇りにかけて造ってはくれませんか。