残す人


お料理を残しそうな方は、一見(いっけん)しただけでわかります。


飲み物を注文され、前菜にひと箸、手をつけ始めたときに「あっ、こりゃだめだ」とわかるのです。


好き嫌いを超えたところで、料理を食べることに興味がないのだと思います。今月になってお話した本鱒のお寿司であろうが、浜防風であろうが、鰆であろうが、一口食べるだけであとは残されます。


ほとんどが予約なし、一見(いちげん)のお客様で、「コースのお料理だけですがよろしいですか?」と玄関先でお伺いもするのですが。。。。


まっ、この手の方は決して裏を返し、馴染みになることはありません。


このサイトにおいでいただく方も、店へお越ししただくお得意様も90%のお客様が食べること、飲むことに興味津々・・・・という方々ですから、不味いならともかく、残すという気持ちが理解できないと思います。


なんといっても私自身が理解できないのですから、こういうお客様への対処の仕方がわかりません。


残念ですが、仕方ありません、と諦めもつきます。


別に、食べることは嫌いではなさそうなのに残す方もいらっしゃいます。


先日フリーで見えたお客様は、お若いのですが、見るからにお金は持っていそうな方でした。「お金持ってるオーラ」をバンバン発している、バブルの残骸みたいな方です。


この方は、お連れの方と東京、京都あたりの食べ物話をチラッ、チラッとさせながらほんのちょっとづつ残すのです。まるで、「俺は○○あたりの常連だけど、この味は口に合わないよ」とばかりに。一皿をきれいに食べるということを決してしません。


負けず嫌いがむくむくと起こり、話題になっている店に負ける気はしていないものですから、料理の説明などもだんだんにしなくなってしまいます。不機嫌さは顔には出しませんが。


まっ、こちらからお話をさせていただく雰囲気も感じさせない、「板前風情」を見るような目ですから、取り付く島もありません。


負ける気はしないといいながら、こういう残され方をされるとがっくりきます。99%の上質なお得意様に恵まれながら、たった一組のフリーのお客様の一切れ残った皿を見てめげてしまいます。


「さより」や「鰆」のお話で妙にいじけた言葉を繰り返していたのも、たった一組のお客様の一切れのためでした。


料理屋が残飯にめげてどうする・・・・というのが当然なのでしょうが、普段食べっぷり飲みっぷりのいいお客様に恵まれているとかえっていけません。


普段が恵まれすぎているのでしょうね。そういうときに気がつきます、お得意様の有難さ。