格の違い


最近・・・でもないのでしょうが、小柳某とか、ミーシャ(カタカナではいけないのか?)とか、宇多田なにがしとか、元なんとかとか、「歌うまい系」の若手歌い手がごまんといます。実力派でなければ、ツンクのところへでも行け・・・・と言わんばかりの百花繚乱ぶりです。


若い聞き手も「あの子はうまいから」とデビュー早々実力を認めるのです。


で、
久しぶりにライブの録画で吉田美奈子を聞いて仰け反りました。格が違います。年季が違います。日本にもこんな歌い手がいたのだ・・・と改めて認識しなおしました。


実を言うと吉田美奈子は、ほんの少々聞いてはいても特に好みのミュージシャンというわけでもなくて、熱心なファンではなかったのですが、聴き始めると好き嫌いを超越した、凄みとでも言うほどのうまさに度肝を抜かれました。いまさらですが。こんな歌い手がいることは、美空ひばりがいたのと同じくらい、日本人は誇りに思わなくてはいけません。


バック・ミュージシャンがまた素晴らしい。ホント素晴らしい。


25年前から私のアイドルだった、岡沢章さん、村上ポンタ秀一さん(さん付けになってしまう)、土方隆之、小倉博和。ベース、ドラムス、ギター、ピアノのシンプルなカルテットが分厚いサポートをするのはほとんどスティングのバンドみたいで、とても日本のミュージシャンとは思えません。


井上陽水などのライブでも思うのですが、長い実績をもつスタジオミュージシャンがバックで本領を発揮するステージは、手錬の職人の芸を見るようでわくわくします。


ステージにたくさんの若いバック・ミュージシャンがいて、アレンジが凝っていても、ビートの粒がはっきりしなくてつまらない音だったりするステージも多い中で、職人たちの演奏は肩の力が抜けていながら押さえるところは押さえ、風格の違いを感じさせてくれます。


若い「歌うまい系」と思われている歌い手はもちろんのこと、ロックで大きな音を出したり、音数が多いことでうまいと勘違いしてしまっている楽器小僧たちも、吉田美奈子のライブを見て反省するといいのです。私たちはまだまだ未熟者だったと。


自分がマーケティングで売れている「うまい系」の歌い手だったら、この吉田美奈子をみたら二年くらい山ごもりをしようと決心するに違いありません。そのくらいの聞く耳と、音楽に謙虚な心を持っていたら第二の吉田美奈子になれるかもしれないと思うのです。


すげーな、吉田美奈子とそのバンドの面々。