ねじ一本


さる大きな会社のエンジン試作工場を取り仕切りられていた方がお見えになられました。


アルファ・ロメオと共同の仕事をされた時のこと、「アルファには製作の最終工程で、調整をするおじさんがほんとにいるんですよ」と。


「ここをもうちょっと削って、ここはこうして」と性能とは直接関係なくても、車好きの官能を揺さぶるような調整を最後まで忘れないアルチザン(職人)がいるというのは噂だけではなかったのです。


そういうこの方も「ねじ一本しめていくら・・・・みたいな仕事はしたくないですね」とおっしゃいます。


日本の車といえば、あの大会社に象徴されるように、生産管理をいかに厳しく突き詰めて、原価を抑え、官能よりは性能とコスト・・・・です。


この厳しい時代には、それでなければ生き残れないのではないかと思うほど、世の中は利潤追求に偏りつつあります。


食の世界も同様です。


世間一般でもてはやされ、人気のお店と言われるのは、私から見れば、ご主人の美味しいもを楽しんでいただきたいという気持ちが見える店ではなくて、いかに集客力を高め、利潤を追求するかを追いかけているように見えます。


アルチザンがアルチザンとして生き残れる時代が来るのでしょうか。