八海山〜天狗舞


八海山がチタン製のひょうたん型ボトルを出したのが一昨年11月頃のことでした。正確な値段は忘れてしまったのですが、チタンゆえ値段もかなりのものでした。


610mlのチタンが酒の味に劇的な変化をもたらすかどうかもわかりませんでしたから、興味もなかったのですが、とりあえず、とお付き合いで一本だけ買っておきました。


このチタンボトルを買った人だけに、八海山がそのボトルへ詰め替えるための大吟醸を翌年も売ってくれます。


八海山の通常の大吟醸は四号瓶しか知らないのですが、詰め替え用の大吟醸は一升瓶です。細かなデータまで公表されませんので酒屋さんから聞いた話しですが、どうやら毎年の鑑評会出品酒を熟成させたものを瓶詰めしているようです。熟成の方法も長さもわかりません。


亡くなった先代の社長は自分用に緑色のボトルへ熟成させた大吟醸を囲っていたと聞きます。まさに秘蔵酒、表へは出ない社長のお客様だけが飲めたお酒だそうです。


八海山は普通の大吟醸でも十分美味しいお酒ですが、今年初めて詰め替えたチタンボトル用に大吟醸は、さらに柔らかく、ふくよかでアルコールを感じさせないほどのお酒でした。おそらくかなりのレベルの大吟醸を冷温で三年以上熟成させているのはないかと想像します。きっと社長の秘蔵酒というのもこんなお酒だったのではないでしょうか。


日本酒は新酒に限る、熟成など味を落とすだけだと信じていらっしゃる方は、一度通常の大吟醸と飲み比べてみるといいでしょう。


目の上の鱗が落ちます。


昨年春、石川県の天狗舞が山廃純米大吟醸の生を発表しました。山廃とは思えないほど落ち着いた淡麗な味わいに、天狗舞の新たな山廃の形を見たようで驚いたものです。


そして今年は新たに、今まで使っていなかった「雄町」(酒米)を使った純米大吟醸を造ったそうです。


昨年の山廃と同じく、生産量わずか300本。全国10軒の酒屋さんにだけ配られると聞きました。


杜氏中三郎さんの新たの挑戦に期待したいと思います。